ウイルス対策ソフト大手のトレンドマイクロ副社長にマイクロソフトの大三川彰彦執行役員(43)が就任することが明らかになった。日経コンピュータの取材によると、創業者であるスティーブ・チャン社長兼CEOは全世界を統括するグローバル事業のトップとなり、新しく就任する大三川氏が実質的な日本地域担当のトップとなる模様。2月4日の決算発表に合わせて正式に発表する(2003年2月5日加筆:トレンドマイクロは2月4日、大三川氏が日本地域 セールス&マーケティング統括本部長に就任したと発表した)

 関係者によると、トレンドマイクロはグローバルの本社と日本地域の本社を別々に機能させるような組織変更を昨年から検討してきた。業績の急成長、株式公開、海外進出などを経て、企業規模が大きくなり、チャン社長が一人でグローバルと日本の両事業を見きれなくなってきたことが理由だ。

 さらに、「チャン社長が台湾出身であることから日本の会社と思われないことが悩みで、日本の会社としての顔になってくれるような日本人のトップを探していた」(関係者)という。

 当初は、それぞれ日本に本拠を置きながらも、グローバルの本社と日本地域の本社を組織的に分離する考えだったため、日本地域本社の社長として人選を進めていた。チャン社長は「マイクロソフトの企業統治を手本にしたい」(関係者)と考えており、なかでもエンタープライズ畑を歩んできた大三川氏に白羽の矢が立った。

 しかし、組織的な本社分離は、税法上の繁雑さなどが理由で断念した模様。そのため、大三川氏は実質的には日本地域担当のトップだが、肩書きとしては副社長になると見られる。現在トレンドマイクロに副社長はいない。大三川氏は1月末付けでマイクロソフトを退社し、2月からトレンドマイクロに籍を移す。マイクロソフトとトレンドマイクロの本社は新宿の同じビル。「フロアは下がるが、ポジションや収入は大幅に上がる」(関係者)。

 大三川氏は1992年に旧DECからマイクロソフトに入社。2000年5月から執行役員を務めており、ビジネスインターネット事業部長、エンタープライズ営業本部長、ゼネラルビジネス統括本部長を歴任してきた。昨年10月からは、マイクロソフトが中堅・中小企業市場や自治体市場の開拓を狙った「ITキャラバン」の指揮も執っていた。ITキャラバンは、セミナー・スペースや体験スペースを備えたトレーラ車で全国を行脚するイベント。

 この件に関してトレンドマイクロ広報は「何も聞いていない。今のところ、その予定もない」としている。

(井上 理=日経コンピュータ)