「グリッド・コンピューティングは、企業情報システムにおける“第3世代”の処理方式。今がスタート時期で、最低でも20年は利用されるだろう」。カナダのプラットフォームコンピューティング(http://www.platform.com/)でCTO(最高技術責任者)を務めるソニアン・ゾウ氏はこう断言する。プラットフォームコンピューティングは、グリッド・コンピューティングを実現するミドルウエア「Platform Grid Suite」の開発・販売元である。

 ゾウ氏は、企業情報システムにおける第1世代の処理方式として、メインフレームによる集中処理を挙げる。「この処理方式では、プラットフォームが物理的にも論理的にも集中化していた」(ゾウ氏)。第2世代は、クライアント/サーバー型の処理モデルである。「数多くのサーバーとクライアントが存在し、プラットフォームが物理的にも論理的にも分散していた」(同)。

 第3世代となるグリッド・コンピューティングは、「物理的には分散、論理的には集中」というもの。インターネットを介して接続される多数のコンピュータが、物理的には分散しているものの、論理的には1台のコンピュータとして利用できる。「1960年代に誕生したメインフレームは1980年代まで栄えた。クライアント/サーバー型処理モデルの中心となるパソコンは、1980年代の誕生から今日まで20年間の歴史を保っている。グリッド・コンピューティング技術も、第1世代、第2世代と同じくらいの期間は続くはずだ」とゾウ氏はみる。

 プラットフォームコンピューティングのPlatform Grid Suiteは、グリッド・コンピューティング用ミドルウエアとして欧米で知名度の高い製品の一つ。利用者がバッチ・ジョブを投入すると、ネットワーク上に分散する複数のコンピュータの中から処理能力に余裕のあるハードを探し出し、処理を振り分ける。日本では、日本法人のプラットフォームコンピューティング(http://www.platform.co.jp/)が販売している。

 米IBMは、ビジネス用途におけるグリッド・コンピューティング・システム構築事業の戦略的なパートナとしてプラットフォームコンピューティングを選定。IBMがPlatform Grid Suiteを販売するほか、製品強化のロードマップも共同で作成していくことを決めている。これを受けてプラットフォーム日本法人と日本IBMも昨年12月20日、プラットフォーム製グリッド・コンピューティング製品の販売で提携したと発表した。

森 永輔=日経コンピュータ