年末年始の休日を利用してシステムを更改・刷新する金融機関が相次ぐ中で、注目すべき新システムが1月6日に無事に全面稼働した。地銀上位の広島銀行と福岡銀行の共同システムである。本格的なシステム共同化プロジェクトを成功させた地方銀行は、両行が初めて。広島市内にある広島銀行のシステムセンターで、1月6日午前10時20分から開かれた式典に出席した広島銀行の高橋正頭取は「システムの共同利用でシステム投資コストを3割程度低減できる」とメリットを強調した。

 両行は1999年8月から基幹系システムの共同化に取り組んだ。共同化の範囲は非常に広い。勘定系や情報系、国際系、対外接続系など基幹系システムのほぼすべてに及ぶ。異なる地銀同士がここまで広範囲にわたりシステムを共同利用するのは、他に例がない。日立ユーザーであった広島銀行は、既存の基幹系システムのほとんどを思い切って捨て、福岡銀行側の既存システム(主にIBM機上で動作)をベースに開発した共同システムに乗り換えた。式典に出席した福岡銀行の寺本清頭取は「他行にも共同システムの利用を呼びかけていきたい」としている。

 両行の共同システムは昨年1月から順次稼働し、福岡銀行が先行利用していた。この年末年始に広島銀行側が共同システムへの移行作業を実施。ATM(現金自動預け払い機)関連やインターネット・バンキング関連のシステムを今年1月4日に利用し始めたのを皮切りに、共同システムに全面移行した。

 共同システムの開発は日本IBMと日本ユニシスが担当した。今後の運用は日本IBMにアウトソーシングする。IBMは100%子会社の日本アイ・ビー・エム共同ソリューション・サービスに、日常業務を委託する。共同システムのハードは、広島銀行のシステムセンター内に設置する。

 このほかにも年末年始は、金融機関のシステム刷新が目白押しだった。郵政事業庁は郵便貯金のオンライン・システムを7年振りに刷新した。日本最大の勘定系を含む新システムは、1月4日にオンライン系を稼働。「1月6日現在、順調に動いている」(郵政事業庁貯金部の池田修一システム計画室長)。

 郵貯の新システムの最大の特徴は、24時間連続稼働を可能にしたこと。東西2カ所で分散稼働している郵貯のシステムのうち、今回は東日本地区のシステムを切り替えた。西日本地区のシステムは、来年1月に動かす。新システムの開発にはNTTデータや富士通、日立製作所、日本IBM、NECなど、大手ベンダーのほとんどが何らかの形で参加した。

 熊本県の肥後銀行と島根県の山陰合同銀行、青森県のみちのく銀行による共同システムも、この1月に部分稼働を迎えた。1月の段階では、肥後銀行が先行して共同システムを利用開始。山陰合同銀行とみちのく銀行は今年5月から、共同システムを使いはじめる。共同システムは日立製作所が開発した。

大和田 尚孝=日経コンピュータ