日立製作所は12月17日、自社のサーバー、ミドルウエア、ストレージ、ネットワークなどシステム基盤全体をカバーする統一コンセプトを発表した。名称は「Harmonious Computing(ハーモニアス・コンピューティング)」。システムが自律的に負荷分散やリソース構成をしたり、複雑なシステム構成を仮想化して単純に見せる技術によりユーザーの運用負荷を軽減するというもの。今年10月以降IBMやサン・マイクロシステムズ、ヒューレット・パッカードらが提唱した「自律コンピューティング」と同様である。日立製作所は今後の製品開発事業やサービス事業を、このコンセプトに則って行う。

 Harmonious Computingはさらに「発展」、「共創」、「信頼」という下位コンセプトからなる。「発展」はシステムの拡張性の向上と運用作業の負荷を軽減すること。「共創」は異機種のハードウエア間や、既存システムと新規システム間の連携を容易にすること。「信頼」は安定稼動とセキュリティを確保することだという。

 「発展」の核となる技術は主に運用管理ソフト「JP1」に実装する。ユーザーが設定した実行基準に応じて、論理分割したサーバーのパーティションを動的に変更させる。より重要な業務には多くのパーティションを使用する。また、複数・異機種のストレージを仮想的に一つのストレージとして管理する。この技術は来年中に「JP1/HiCommand」で実現する。このほか、NASの「NetStorage」やルータなどに自律機能を持たせ、ファイル容量やネットワーク帯域を業務に応じて増減させる。

 「共創」によって、Webサービスを使って複数のビジネスプロセスを統合することや、複数のサーバー間で業務処理を動的に分散することができる。「発展」にあるパーティションの動的な変更は一つのサーバー内で行うのに対し、こちらは物理的に別のサーバーを追加するような技術だ。実装は2004年以降になる。

 「信頼」を実現するために、日立製作所はOSに障害が起きた時にメインフレーム並みの速度でサーバーを切り替える「高速ホットスタンバイ」やシステムの運用支援サービスなどをすでに用意しているという。今後はシステムが自律的にセキュリティ・チェックを行ったり、パッチの適用による修復を行うようにする。この技術の実装も2004年以降になる。

 日立製作所がHarmonious Computing関連技術に投資する研究開発費は今後3年間で約4000億円。これらの構想のうち一部はすでに製品やサービスとして提供済みだが、ほとんどは来年以降になる。

(矢口 竜太郎=日経コンピュータ)