米インテルのハーマン氏 「大規模演算に利用されるコンピュータの性能は、ムーアの法則と一致して進化させることができる」。米インテルで高性能コンピューティング分野を担当するリック・ハーマン プログラム マネジャは、こう語る。ムーアの法則とは、「プロセサの中に集積されるトランジスタの数が18カ月で2倍になる」というもの。

 ハーマン氏がムーアの法則が当てはまるとしている大規模演算用のコンピュータは、多数のパソコンやサーバーを使って構築するクラスタ・システムやグリッド・コンピュータである。「プロセサだけでなく、マザーボードやメモリなどの性能も毎年向上している。クラスタ・システムやグリッド・コンピュータなどの価格性能比の伸びは、従来の高性能コンピュータよりも飛躍的に良くなるだろう」と、ハーマン氏は予測する。

 現在でも、クラスタ・システムの価格性能比は、従来のスーパー・コンピュータの3倍近く優れるとインテルは主張する。「現在、11テラFLOPSの性能を備えるクラスタ・システムは3000万ドルで開発できる。一方、従来の大規模演算用コンピュータでは、40テラFLOPSシステムを3億ドル程度かかる」とハーマン氏。つまり、1テラFLOPSあたりの開発費用は、クラスタ・システムでは約270万ドルだが、従来のスーパー・コンピュータでは750万ドルと割高になる。

 すでに、約60の企業や研究機関で、IAベースのクラスタ・システムが導入されているという。そのなかには、ダイムラー・クライスラーや英BP、米国の研究機関であるパシフィック・ノースウエスト国立研究所がある。「高性能コンピュータのランキングである『トップ500』(http://www.top500.org/)の中で、インテル・アーキテクチャ・ベースのシステムは急激に増えている。2年前は0.5%程度だったが、現在は11%になっている」とハーマン氏は指摘する。

(西村 崇=日経コンピュータ)