「米国では在宅勤務者の数が急増している。それにもかかわらず、企業が在宅勤務向けに講じるセキュリティ対策はまだ十分とはいえない」。米ソニックウォール(http://www.sonicwall.com/japan/)のパトリシア・ブライト副社長は、米国のセキュリティ事情を語る。ソニック・ウォールはVPN(実質的な専用線網)構築機能やファイアウオール機能などを兼ね備えるハード製品の製造販売を手がけている。

 「在宅勤務者やモバイル環境で仕事をする人は年々急増している。この傾向が続けば、社外から社内システムを利用するときのセキュリティ対策を講じることが、企業にとって今後ますます重要になってくる」と、ブライト氏は指摘する。調査会社である米In-Stat/MDRは、2005年には在宅勤務者は約3500万人にのぼるという予測を立てている(http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/ITPro/USNEWS/20010726/16/)。

 「特に大切なのが、企業情報システムにある重要情報を在宅勤務者がインターネット経由で取り扱えるようにしたときの対策。外部からの不正侵入を受け、情報が漏えいしてしまえば、企業にとって大きな損失につながる」(ブライト氏)。

 このような情報漏えいを防ぐために対策に乗り出している米国企業はすでにあるという。その企業では、ファイアウオール機能やVPNを構築する機能を備えるソニックウォール製のハード製品を在宅勤務者に配布している。「営業部員にハード製品を配布して在宅勤務ができるようにした。企業内の情報システム担当者は、専用の管理ソフトを使って配布したハードを一括管理している。そのため在宅勤務者はハード製品の設定といった管理をする必要は特にない」と、ブライト氏は説明する。

 米国で在宅勤務者が急増している背景に、景気の低迷がある。米国企業では人員削減策を講じているため、社員一人ひとりに割り当てられる仕事の量は増えているのが現状だ。その一方で、「社員に対して残業を認めていない企業も多い。オフィスの光熱費といった経費を節減するためだ。仕事を家に持ちかえり家庭のパソコンで仕事を続ける社員が増えてきていることで、企業もそのような社員向けのセキュリティ対策に高い関心を寄せるようになってきた」と、ブライト氏は見ている。

西村 崇=日経コンピュータ