IBMのラダウスキー・バーガー氏 米IBMでe-ビジネス・オンデマンド事業の責任者を務めるアービング・ラダウスキー・バーガー ゼネラル・マネジャー(写真)が来日、同社が打ち出した新たなコンセプトである「オンデマンド・ビジネス」への取り組みの概要を語った。「IBMは顧客に対し、『ビジネス・トランスフォーメーション』、『データセンター』、『オペレーティング・エンバイロンメント』、『ユーティリティ・サービス』という四つのサービスを提供していく」とラダウスキー・バーガー氏は語った。

 オンデマンド・ビジネスとは、「企業の内部に加え、主要なビジネス・パートナやサプライヤ、最終顧客まで含めたビジネス・プロセスを端から端まで統合する。そして、顧客の要望や市場での機会、外的な脅威に対して、柔軟かつ迅速に対応できる」というもの。このオンデマンド・ビジネスを支えるのが、企業がコンピューティング・パワーを“オンデマンド”で購入できるようにすることを狙った「オンデマンド・コンピューティング」構想である。

 一連の「オンデマンド」構想は、IBMのサミュエル・パルミサーノCEO(最高経営責任者)が10月末に明らかにした。ここでパルミサーノCEOは、「オンデマンド・ビジネスに取り組むお客様に対して、それを支えるオンデマンド・コンピューティングの基盤を提供することを今後の事業の中核にする」と語った。ラダウスキー・バーガー氏が語る四つのサービスが、そのオンデマンド・コンピューティング基盤となる。

 「ビジネス・トランスフォーメーション」は、川上から川下までをにらんだ経営・業務改革コンサルティング・サービスのこと。米プライスウォーターハウスクーパースの経営コンサルティング部門を買収したのは、このサービスを強化するためだ。「データセンター」は、セキュリティ・レベルが高く、可用性に優れたデータセンターを提供すること。「オペレーティング・エンバイロンメント」は、既存のアプリケーションと新規に開発するアプリケーションを連携できるようにすることをいう。「ユーティリティ・サービス」は、プロセサなどを使用量に応じて課金する料金体系の導入を指す。

 IBMはすでに、これらのサービスを提供している。ラダウスキー・バーガー氏は、「オープン、統合、仮想化、自律という四つの分野における新しい技術を基盤にしている点が、これまでとは異なる」と強調する。「オープン」の代表例はLinux。コスト削減に効果を発揮するのはもちろん、コミュニティの活動によって機能の向上も著しい。「今後の成長にも期待が持てる」(ラダウスキー・バーガー氏)。

 Webサービス技術は、アプリケーションの「統合」に寄与する。「仮想化」や「自律」の技術は、データセンターの運用効率化に役立つ。「統合」、「仮想化」、「自律」とも、「オープン」な業界標準に基づいて提供する。異なるメーカーの製品が混在する環境でもサービスを提供できるようにするのが狙いだ。

 ただし、「統合や仮想化、自律といった分野は、大手ITベンダーの多くが注目している。現在はIBMがトップを走っているが、すぐ後に多くの競合が続いている」とラダウスキー・バーガー氏。他社との差別化を図るために、IBMは早急に四つのサービスを具現化する必要があるといえよう。

森 永輔=日経コンピュータ