NECは12月3日、同社の相談役である関本忠弘氏を解任したと発表した。NECが配布した広報資料によると、「現執行部を批判する対外的な言動が当社の業務執行に好ましくない影響を与えている」というのが解任の理由。資料では、「当社執行部と関本氏の信頼関係が破綻している」という“身内の恥”まで明らかにしている。ただしNECは、「言動」、「影響」、「破綻」の具体的内容は明らかにしていない。

 関本氏は、パソコンをはじめとするコンピュータ事業や半導体事業を強化し、通信事業中心だったNECを今日の姿に変えた“立て役者”。1980年6月から1994年6月まで社長を務め、この後1994年6月から1998年10月まで会長の職にあった。社長就任時には売上高が1兆円に満たなかったNECを、社長・会長として腕を奮ったこの18年間の間に5兆円の企業に成長させた。

 ただし、経営者としての末期は意思決定の遅れも目立っていた。その代表がパソコン事業におけるPC AT互換機(DOS/Vパソコン)路線への変更の遅れ。DOS/Vパソコンが市場で勢いを増していた1995年当時、関本氏は日経コンピュータのインタビュー(1995年4月3日号)で、「PC-9800の優位は揺るがないし、DOS/Vパソコンを製品化することなどありえない。DOS/Vパソコンは決して安くはないし、動作するソフトもPC-9800の方が断然多い」と主張していた。周知のように、この方針は1997年10月に変更されている。

 関本氏は、防衛庁の調達を巡る背任事件の責任をとって1998年10月に会長を辞任。2000年6月には取締役も退任していた。

森 永輔=日経コンピュータ