NTT、NTTコミュニケーションズ、富士写真フイルム、富士通など9社は来年1月から、複数のWebサービスを組み合わせて、音楽アーティスト「喜多郎」のファン向けWebサイトの運用実験を開始する。大きな特徴は「UDDIレジストリ」を使うこと。WebサービスやUDDIレジストリを実際のビジネスに利用することを想定して実施する本格的な実証実験は珍しい。

 この実験は、NTTや富士通などが今年2月から進めてきたWebサービスの実証実験を発展させたもの。新しい実験を機にNTTコミュニケーションズや富士写真フイルムが参加した。「これまでは技術面の課題を検証してきたが、来年1月からは実際のビジネスで利用するときにどのような課題が出て、どう解決できるかを検証していく」と、富士通 プロジェクトA-XMLの浦野昇 XML基盤技術部長は語る。

 UDDIレジストリは、インターネット上に公開するWebサービスの所在を管理するいわば「Webサービスの電話帳」。今回の実証実験では、NTTコミュニケーションズが今年10月から運用を開始したものを利用する。「UDDIを実際の電子商取引に利用するときの課題を抽出できる」と、NTTコミュニケーションズ ソリューション事業部プラットフォーム技術開発部ミドルウェアグループの金子英治グループリーダは説明する。

 喜多郎のファン向けWebサイトで、利用するWebサービスは全部で九つある。この中には、(1)喜多郎が撮影した風景写真の注文を受け付ける、(2)商品の決済をする、(3)登録ユーザーを管理する、といった役目を担当するWebサービスがある。このうち、写真の注文処理や課金決済など五つのWebサービスは、UDDIレジストリに登録されている。

 実証実験では、Webサイトにアクセスしたユーザーの指示に応じて、Webサービスを利用する。例えば、ファン向けWebサイトを公開するWebシステムがユーザーから風景写真の注文を受け付けると、まずWebシステムはUDDIレジストリにアクセスし、写真注文用Webサービスの所在を参照する。そのあと、そのWebサービスに接続して、注文を処理する。場合によっては、写真注文用Webサービスで注文した後、課金決済サービスで商品の決済をするといったように、複数のWebサービスを連動させて使う。

 今回の実証実験で、写真注文用のWebサービスは富士写真フイルムが開発。既存の注文用システムの機能をWebサービスに変換する専用サーバーを新たに構築し、Webサービスとしてインターネットに公開する。「既存の写真注文用のシステムをなるべく生かした形でWebサービスにすることで、インターネットを使った新しいビジネスが展開できる」と、富士写真フイルム DIソフト開発部の中島一城 主任技師は期待する。富士写真フイルムは、Webサービスの提供者として、ビジネスの有効性などを検証していく。

 ファン向けWebサイトを公開するシステムの構築と技術支援は、NTTや富士通などが担当している。4カ月間の構築期間を経て、現在テスト段階に入っている。「構築した後のテストでチェックする項目が多く非常に気を遣う」と、富士通の浦野部長は語る。

西村 崇=日経コンピュータ