マイクロフォーカスのビルマン氏 「我々が打ち出しているメッセージは、“The Future of COBOL”。COBOLには未来(フューチャー)がある。次期バージョンの製品で、Webサービスなど新技術との親和性をいっそう高めていく」。オープン系COBOLベンダーの英マイクロフォーカス(http://www.microfocus.com/)のプロダクト・マネジャ、ジョン・ビルマン氏(写真)はこう語る。

 マイクロフォーカスは2003年に、COBOLの開発・実行環境を強化する。Windows系OS向けの開発ツール「Net Express」、UNIX系OS向けの開発ツール「Server Express」、実行環境の「Enterprise Server」の次期バージョンである「4.0」の日本語版を、2003年夏にも販売開始する予定だ。Enterprise ServerはWindows系OSとUNIXで稼働する。UNIX版はAIX、hp-ux、Solaris向けを用意する。

 バージョン4.0では、Webサービス、マイクロソフトのソフトウエア体系「.NET」、Java、XMLといった、新技術との連携機能を強化する。特に、Webサービス関係の機能を追加する予定だ。実行環境であるEnterprise Server上で動作するCOBOLプログラムから外部のWebサービスのアプリケーションを呼び出したり、逆に外部のWebサービスのアプリケーションからCOBOLプログラムにアクセスできるようにする。現時点では部分的にJavaなどによるプログラムを別途作り、そのプログラム経由でアクセスする必要がある。

 そのほか、.NETやJavaのサーバー向けソフト仕様「J2EE」への対応も進める。マイクロソフトの開発ツール「Visual Studio .NET」からマイクロフォーカスのCOBOL開発環境を利用できるようにする。現バージョンですでに .NETに準じたCOBOLプログラムを開発できる環境は整えている。そのほか、J2EE準拠アプリケーションとCOBOLプログラムをより容易に連携させる仕組みを用意する。

 XMLに関しても、機能をもう一歩前進させる。COBOLにおけるレコード定義とXMLのメタデータ定義(XMLスキーマ)とのマッピングを可能にするほか、COBOLプログラムでXML文書を作成したり、XML文書をCOBOLプログラムに取り込むロジックをより簡単に作れるようにする。

 ビルマン氏によれば、すでにドイツ銀行がバージョン4.0の試験利用を進めている。ドイツ銀行は、複数のシステム間でデータを交換する仕組みに、XML関連の新機能を適用した。Windows上で稼働する証券管理システム(Net Expressで開発)から、証券の取引データをXML形式で他のシステムに送信している。「XMLは企業内、あるいは企業間の標準的なフォーマットになりつつある。XMLを扱えるようにするメリットは大きい」(ビルマン氏)。

 「我々はCOBOLプログラムという『資産』を“凍結”させない」と、ビルマン氏は強調する。同社の製品を使って既存のCOBOLアプリケーションを新しいシステム・アーキテクチャの上で動かす例が増えてきているという。スペインのシステム・インテグレータのアルノバは、IBMメインフレーム上で動く銀行向けシステム(COBOLで1100万ステップ)を、マイクロフォーカスの製品群を使ってWindows2000上に移植した。ある銀行で「移植版」の導入プロジェクトが進んでいるという。アルノバはアクセンチュアの子会社である。

 「業務改革と同時にシステムを作り替えるケースが増えている。それでも既存のCOBOLプログラムが100%無駄になるわけではない。各社が蓄積してきたCOBOLプログラムは資産として貴重であり、部分的にでも活用できるはずだ」(ビルマン氏)。

高下 義弘=日経コンピュータ