オン・ザ・エッヂの堀江社長 「コストを相当切り詰めないと無料ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)なんてできませんよ」。インターネット関連システム構築会社オン・ザ・エッヂ(http://www.edge.co.jp/)の堀江貴文社長はこう言い切る。同社は12月1日から、民事再生法を申請した無料ISPのライブドアの事業を本格的に受け継ぐ。

 ライブドアの事業を引き継ぐ上で、オン・ザ・エッヂは大幅なコスト削減を敢行した。その方策は「内製化」と「変動費化」だ。

 まず、サーバー設備のリース料と保守費用はオン・ザ・エッヂ自身のデータセンターを利用することで実質ゼロにした。それまで外部に委託していた無料掲示板やWebメールなどの機能も自社でまかなう。これらにより、「長期契約で固定費になっていた外部委託料を、設備の更新時にかかる変動費として見ることができるようにした」(堀江社長)。ネットワーク・インフラはインターネット運営のフリービット・ドットコム(http://www.freebit.com/)に委託し、収益にほぼ比例する料金契約を結んだ。

 ライブドアの債権や債務、業務委託企業との関係を一切受け継がなかったことも、オン・ザ・エッヂの目論見通りになった。そのため、「過去のしがらみも追加投資もないに等しい状態で、新規事業を立ち上げることができた」と堀江社長は満足する。営業譲渡の発表時に公表した「12月から単月黒字」は十分実現できると強調する。

 ライブドア事業の主な収入源は、利用者の回線使用料の一部を通信事業者(キャリア)から受け取るキック・バック報酬である。利用者がいて、負債がない状態から事業を始めれば黒字は当然見える。現在も毎日数百人ペースで会員は増え続け、アクティブ・ユーザーは30万人ほどいるという。

 事業形態は踏襲するものの、プロモーションの仕方は変える。これまでのように大衆に向けた販促ではなく、“地域”と“初心者”にターゲットを絞る。具体的には、地方新聞などと提携して、離島や遠隔地などブロードバンド回線の普及がどうしても進まない地域に集中して販促をかける。初心者に対しては、雑誌付録のCD-ROMなどで接続ソフトを配布する。「ダイヤルアップ接続の利用者は減っても、ライブドア全体の会員数は増える仕組みを作る」(堀江社長)のだという。

 利用者に対するサービスの向上も果たす。「10万人程度の利用にしか耐えられないサーバーだったが、100万人でも利用できるようにした。つながりやすくなったはずだ」と堀江社長は自信を見せる。「つながりにくいもう一つの原因になっていた、接続用クライアント・ソフトのバグも修正を完了した」(堀江社長)。

(矢口 竜太郎=日経コンピュータ)