Webブラウザを提供するノルウェーのオペラ・ソフトウエアは10月15日、携帯電話のディスプレイでもパソコン向けに作られた通常のWebページを不自然なく閲覧できるようにするレンダリング技術を開発したと発表した。この「Opera Small-Screen Rendering」と呼ばれる技術は、同社の携帯電話向けブラウザ「Opera」に実装され、通常のWebページを携帯電話の画面サイズに合わせて自動的にフォーマットし直す処理を行うもの。普及すれば、携帯電話を取り巻くインターネット・ビジネスに大きな変化をもたらしそうだ。

 オペラ社によると、新技術は「フレームやテーブルで区切られている複雑な構造のWebページを、シンプルな構造にフォーマットし直す」、「画像を画面サイズに合わせて縮小したり取り除いたりする」、「フォントのサイズを変更する」、「バナー広告を取り除く」、「Webページ中にある空白を無視する」といった複数の処理を自動的に行う。これにより、ユーザーは携帯電話の小さなディスプレイからでもパソコン向けに作られた通常のWebページを楽しむことができるとしている。

 また、ユーザーは自在にズームイン/アウトをすることができ、例えば「全体像を把握したいときはズームアウト、詳細を読みたいときは任意の個所をズームインする」といった操作も可能になるという。

 これまで、携帯電話の小さなディスプレイで通常のWebページにアクセスすると、上部にあるテキストの一部や小さな画像しか参照できなかったり大幅なスクロールが必要となり、ページの全体像を把握したりコンテンツを楽しむことが困難だった。そのため、携帯電話からのアクセスを期待するWebサイトの運営者は、パソコン向けの通常のWebページのほかに、WAP(ワイヤレス・アプリケーション・プロトコル)やC-HTML(コンパクトHTML)といった携帯端末向けの記述言語で書かれたWebページも別途用意する必要があった。

 すでに携帯端末向けOSを提供する英シンビアンが、ノキアやソニー・エリクソン、パナソニックなどの端末メーカーに対して、新技術を実装したOperaを積極的に展開すると表明するなど、普及への動きが見られる。オペラ・ソフトウエア ビジネスディペロップメント・フォー・アジアの冨田龍起氏によれば、「日本でも新技術を携帯電話に実装する複数のプロジェクトが進行している」という。

 普及が進めば、Webサイト運営者は端末別にコンテンツを用意する必要がなくなり、運用管理の手間が大幅に省けることになる。また、携帯電話を提供する通信事業者は、ユーザーのアクセス増による通信料の増収が見込める。

 新技術を実装した携帯電話向けブラウザのバイナリ・サイズは、実装していないブラウザと変わらない。冨田氏は「組み込みを行うハードウエア側の仕様に大きく左右されるため一概には言えないが、Nokia9210iに対して出荷したOperaのバイナリ・サイズは1.3MBほどだった」とする。なお、新技術実装Operaのメーカーへの出荷価格は「非公表」(同)としている。

井上 理=日経コンピュータ