「マイクロソフトのビル・ゲイツ会長と、サン・マイクロシステムズのスコット・マクニーリ会長の対決のまねをしてはならない。あの二人の論争でいったいだれが得をしたのか?。テクノロジの神学論争をしているヒマなど、顧客にはない」。

 ネットワーク・ストレージ(NAS)最大手の米ネットワーク・アプライアンスのドン・バレンタイン会長は、同社の戦略決定会議でこう発言し、居並ぶ同社幹部を一喝したという。10月9日、NASとしても、SAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)としても使える戦略製品「FAS900」の発表会で、日本ネットワーク・アプライアンス(http://www.netapp.co.jp/)の鈴木康正社長が米本社の会議の様子を明らかにした。

 この戦略会議は、同社がSAN製品を出すかどうかを決定するためのものだった。これまでネットワーク・アプライアンスは、IPネットワークでストレージを接続するNAS製品だけを販売してきた。ファイバ・チャネルを使って接続するSAN製品については、「SANは失敗する」とし、投入してこなかった。

 会議が紛糾したときに、バレンタイン会長が冒頭の発言をし、「すでにSANを構築され、SAN製品なら購入すると言っているお客様をわざわざ説得してNASを売るのか?」と続けたという。この結果、NASとSANを統合できるFAS900を投入することが決まった。

 ただし、SAN市場には慎重に参入する。「NASでもSANでも売りまくれ、というやり方はしない。顧客のアプリケーションの状況を当社のスペシャリストが伺って、SANの必要性がある場合、エンジニアリング・サービスをつけて、きっちりとストレージ統合の提案をしていく。実際の販売とサービスは、すべてパートナー企業にお願いする」(鈴木社長)。

 FAS900の製品力について鈴木社長は、「同一アーキテクチャの製品で、NASとSANをサポートしているのは当社だけ。とにかく顧客が簡単に使える製品を出すという、NASで培った当社の企業文化は、SANの世界においても価値を生むと自負している」と述べた。

谷島 宣之=コンピュータ第一局編集委員