「いわゆる“マニア層”は、市場に対して大きなインパクトを与える消費者だと考えている。マーケティングの世界には、2割の顧客が売り上げの8割をもたらすという“2対8の法則”が存在する。マニア層はこの2割の顧客に当たると思う」。化粧品に関するコミュニティ・サイト「アットコスメ(http://cosme.net/)」を運営するアイスタイルの吉松徹郎CEO(最高経営責任者)は、このように語る。

 吉松氏の発言は、10月3日に開催されたパネル・ディスカッション「ネット・コミュニティとマーケティング戦略」(主催はデータ分析ソフト・ベンダーのSPSS、http://www.spss.co.jp/)で出たもの。インターネット上のコミュニティに集まる人は、特定の分野を好む、いわゆるマニア層が多い。その一方で、ネット・コミュニティをテレビなどと同じく一般向けの広告メディアとして利用する企業が増えている。はたして、ネット・コミュニティの広告効果はどの程度あるのか。これが今回のパネル・ディスカッションの趣旨である。

 パネルでは、「ネット・コミュニティに広告効果はある。ただし、マニア層をいかに刺激するかがポイント」という意見が多数を占めた。実際、アットコスメの会員をみても、「一般的な消費者よりも化粧品にお金をかけるマニア層のほうが多い」(アイスタイルの吉松氏)。

 慶応義塾大学大学院経営管理研究科の国領二郎教授も、「やはりインターネット上のコミュニティに集まる人はマニア層だと思う」と話す。その上で、「コミュニティを主催する企業は、そこに集まる消費者の性向を理解した上でコミュニティの仕組みを設計すべきだ。マニア層は、初期に新しい製品を購入する“マーケット・リーダー層”であるとも考えられる。一般の消費者を排除することなく、マニア層を刺激するようなコミュニティを作れば、広告効果は上がるとのではないか」と続けた。

 関西学院大学商学部の井上哲浩助教授は「マニア層か一般層かという点以外にも注目すべき切り口がある」と提案。「例えば、その製品を利用したことがあるか、ないかといった経験の有無によってもコミュニティを分類できる。消費者は過去に購買経験があるかないかで、広告の受け取り方も変わってくることが、これまでの研究で判明している。コミュニティを主催する企業は、様々な切り口からコミュニティの広告効果を考えることが重要ではないか」と指摘した。

島田 優子=日経コンピュータ