経済産業省は早ければ9月末にも、「ITスキル・スタンダード」の詳細な内容を同省のWebサイト(http://www.meti.go.jp/)で公開する。

 ITスキル・スタンダードは、各種ITサービスの提供に必要な技術者の知識やスキル、レベルなどを体系化した指標。「ITスペシャリスト」や「ソフトウェアデベロップメント」、「プロジェクトマネジメント」、「マーケティング」など11の職種を定義し、それぞれを製品や技術などによっていくつかの専門分野に細分化。個々の職種や専門分野に対して、技術者の実績や能力に応じた7段階のレベルを定める。

 こうした枠組は今年4月に発表したITスキル・スタンダードのα版で示していたが、9月末にも発表するβ版では、レベルごとに要求される実績やスキルの熟達度を詳細に定義する。例えば「マーケティング」職種のレベル5に求められるスキルは、「特定の製品やサービスの責任者として、小規模市場でのマーケティングに関わる環境認識・分析や洞察を行うことができる」としている。同省は、β版に対する業界関係者や学識者の意見を聞いたうえで、最終版を11月に発表する予定だ。

 β版には盛り込まれない見込みだが、経済産業省はレベルごとに、研修の内容・体系に関する指標作成にも着手している。すでに「プロジェクトマネジメント」については、詳細な指標を作成済み。「2002年度中に、少なくとも11職種の半分については指標を完成させる」(経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課の久米孝 総括補佐)計画である。

 経済産業省ではITスキル・スタンダードの普及にあたって、情報処理技術者試験と連携させたり、民間の教育サービス会社、大学などと協力していく考え。「ITスキル・スタンダードのレベル1~2の知識は、e-ラーニングや大学の講義でもカバーできる。情報処理技術者試験で測定できる知識はレベル3~4まで。レベル5~7は相当高度なスキルであり、対面のインタビューなども必要となるので、これを的確に認定することが新たなビジネスとなる可能性もある」(久米 総括補佐)とみている。将来は、政府や自治体のシステム調達基準(日本版CMM)とも、包括的に連携させる考えだ。

 経済産業省はITスキル・スタンダードを定める狙いとして、技術者個人が市場での人材価値を高めたり、企業が明確な人材戦略を描けるようにすることを挙げる。「技術者はITスキル・スタンダードによって、自分がきちんと処遇されているのか、会社を離れても通用するのか、といったことを把握できる。企業にとっては、どの分野にどのような人材を配置するのか、といった人材戦略の立案に役立つ」(久米 総括補佐)としている。

鈴木 淳史=日経コンピュータ