「CRM(カスタマ・リレーションシップ・マネジメント)がうまくいかない,と言う企業が多い。これらの企業は,データ・ウエアハウスを構築したり分析ツールを導入して,CRMを実施したつもりになっているだけだ。実際のCRMを実施しているわけではない」。こう話すのは,大日本印刷C&I事業部企画開発センターe-マーケティングソリューション企画開発室の青木賢一室長である。

 「CRMソフトなどの“ツール”を売りたいベンダーは,CRMの狙いや効果として顧客対応の効率化を強調するが,それは間違っている。コールセンター・システム=CRMというのも誤解だ」と青木室長は指摘する。「CRMは業務を効率化するシステムではない。経営戦略の一部としてとらえなければいけない。顧客データを分析して優良顧客や潜在顧客を識別し,そこに対して無駄のない販売促進活動などのマーケティングを実施するのがCRMだ」(青木室長)。

 大日本印刷は1998年からCRMのコンサルティングやシステム構築に力を入れている。「当社のCRMは顧客情報の収集から,データの分析,その後の販売促進活動の戦略立案まで実施する。顧客の利益になる,本物のCRMだ」と青木室長は話す。同社はCRM事業を強化するため7月31日に,統計分析ソフトを販売するSASインスティチュートジャパンとデータ分析事業で提携した。

 「ただ問題点は,データ分析をして最適なモデルを構築できる人材が少ないこと」と青木室長は打ち明ける。「データを分析するだけなら,勉強すればできる。しかし,データの相関などを考慮して,各企業に適切なモデルを構築できる人材は勉強だけでは育たない。モデルを構築できる人材を育てるのがこれからの課題」と青木室長は話す。

(島田 優子=日経コンピュータ)