ターボリナックスの矢野社長 SRA(http://www.sra.co.jp/)は8月20日,Linuxディストリビュータのターボリナックス ジャパン(http://www.turbolinux.co.jp/)の株式100%を取得したと発表した。同日,ターボリナックス ジャパンはLinuxディストリビューション「Turbolinux」のロゴや企業名,Linux事業に関する知的所有権など本社機能のほとんどを旧米国本社から取得。それに伴い,ターボリナックス ジャパンはターボリナックスに改称した。米ターボリナックスは,8月15日付けで企業名をセンタレックスに変更している。現ターボリナックスとの資本関係はない。

 今回の買収劇の背景には,旧ターボリナックス米国本社の経営が不安定だったことがある。米国では倒産を示唆する報道が流れたほどだ。親会社のふがいなさに業を煮やした日本法人の矢野広一社長(写真)は,社長就任3カ月後の今年2月から,米国本社に対し売却をうながしていた。同時に売却先の選定も行っていた。

 株主などとの調整に6カ月を要し,晴れてSRAへの売却が決まった。企業名など知的所有権も含む買収に関して,矢野社長は「狙い通り」ともらす。矢野社長はSRAを売却先に選んだ理由として,「日本企業の中で経営的に“体力”があり,独立系のインテグレータであった」ことを挙げる。SRAはターボリナックスを傘下におさめた後も,Red Hat Linuxを使ったシステム構築をするなど,中立を守る意向だ。

 ターボリナックスは日本企業の傘下に入ることで顧客に対し,安心感を与えたいという意図があった。矢野社長は「本社の意向で日本市場から撤退する,という自体は避けたかった。社長に就任して以来,製品とサポートに関するクレームはなかったが,会社存続についての不安の声をよくいただいた」と語る。

 SRAはターボリナックスが持つアジア市場への影響力をもとに海外市場への展開を狙う。SRAはターボリナックス中国法人と韓国法人も買収する意向だ。2002年3月期で売り上げ16億円弱のLinux事業を,2004年3月に同55億円にすることを目指す。アジア市場でのTurbolinuxのシェアは「中国では6割強,日本では5割強と認識している」(矢野社長)。

 SRA,ターボリナックスの2社が今後の戦略を明確にしているのに対し,旧ターボリナックス米国本社であるセンタレックスの先行きは暗い。Linux事業に対して,もう一方の“柱”であったサーバー管理ツール「PowerCockpit」関連事業の売却先を探しているところだ。

 同社のアーネスト・シコグナCFO(最高財務責任者)は会社の存続について「事業を売却するか,当社への資本参加という形になるか分からないのでなんとも言えない」と答える。2,3カ月のうちに結果は出るという。

矢口 竜太郎=日経コンピュータ