「当社の .NET(ドットネット)戦略は,第2フェーズに突入した。新たな.NET技術を使うことで,企業情報システムが直面している“五つの障壁”をクリアできる」。米マイクロソフトで .NETの戦略立案に携わるサンジェイ・パーササラシー コーポレート・バイス・プレジデント(写真)は,このように強調する。
五つの障壁とは,(1)システムと組織間に存在する障壁,(2)コンピュータの信頼性を確立するまでの障壁,(3)人と人とのコミュニケーションの障壁,(4)知識取得の障壁,(5)日常の利用形態の障壁を指す。
(1)は異なるシステムやビジネスを統合することが難しいこと。(2)は,ハードとソフトの信頼性やインターネット上のプライバシ情報をコントロールするのが容易でないこと。(3)は,人と人とのコミュニケーションの手段が電話,電子メール,インスタント・メッセンジャと多様化しており,統合されていないこと。(4)は,企業内に分散するデータに一元的にアクセスできない。(5)は,パソコン上で音楽,画像,映像といったさまざまな形式のコンテンツを統合して取り扱えないことをそれぞれ表す。
マイクロソフトは,今後同社が投入する .NET製品群を利用することで,五つの障壁を打破できるとしている。(1)の解決策としては,Webサービスの開発/実行環境である次期サーバー用OS「Windows .NET Server」を位置付ける。8月5日から国内でも,ベータ版の提供を開始した。「企業が抱える大きな課題の一つが,インテグレーションだ。システム間やデバイス間などでデータをやり取りするには,コストがかかるうえに難しい作業であるのが現状だ。Webサービスを利用することで,限られた予算内で柔軟なシステム連携が可能になる」と,パーササラシー氏は説明する。
(2),(3),(4),(5)の解決策も挙げている。(2)はOSやプロセサに組み込んで提供する計画であるセキュリティ技術「Palladium」(開発コード名),(3)はリアルタイムでコミュニケーションなどが図れるサーバー用ソフト「Greenwich」(開発コード名),(4)はSQL Serverの次期バージョンである「Yukon」(開発コード名),(5)は「Windows XP Media Center Edition」である。
「.NET第2フェーズ」は,もともとマイクロソフトのビル・ゲイツ会長兼チーフ・ソフトウエア・アーキテクトが7月24日に発表したもの。同社は,今後3年をメドに実現を目指す。ちなみにマイクロソフトは,開発ツール「Visual Studio .NET」を今年4月に出荷したことや,サーバー・ソフト製品でXML,Webサービスを利用できるようにしたことなどを.NETの第1フェーズと位置付けている。