タリーズコーヒージャパンの松田公太社長が,東京・有楽町の国際フォーラムで開かれている「日立ITコンベンション2002」の展示場内にある仮設店舗で,日経コンピュータのインタビューに応じた(写真)。同社は現在,東京・赤坂と溜池などの店舗で無線LANを使ったホット・スポットの試験サービスを提供している。

 「現時点でホットスポット・サービスが売り上げにどう結びついているかどうかは,まだよく分からない。ただし一つ言えることは,ホットスポット・サービスを提供している店舗では,そうでない店舗に比べてパソコンを利用する人が圧倒的に多い。このサービスのニーズが高いことが分かる」(松田社長)。同社はあと数カ月間試験を継続し,その後本サービスに移行して導入店舗を増やしていく予定である。

 一般に飲食店でホットスポット・サービスを提供すると,客が長時間店内に滞留することが懸念されている。この点について松田社長は,大きな問題ではないという。「以前勤務していた銀行では,喫茶店に融資する際に,席数と客の回転率,客単価をまず見ていた。これらを掛け合わせると売上高が見えるからだ。しかしタリーズが手がけるスペシャリティ・コーヒー(特定の条件に合うコーヒー豆を使った高品質なコーヒー)を提供する業態では,そもそも回転率を重視していない。例えばタリーズでは,コーヒーを飲みながらゆっくり本を読みたいを思っているお客様のためにソファーを用意している店舗もある。さらに現状では,店舗を訪れるお客様の半分はコーヒーをテイクアウトしており,回転率だけで売り上げが決まるわけではない」。

 ホットスポット・サービスで最も問題となりそうなのが,接続方法などに関する技術サポートを店内でどう実施するかだ。松田社長は,「店員の研修と合わせて,徐々に展開していくことになるだろう」という。タリーズでの試験サービスで,システム構築を手がけたアットマーク・ベンチャー(http://www.venture.jp/)の大津山訓男CEOは,店内にVoIPによる電話機能とカメラを備えたパソコンを設置して,遠隔地にあるサポート・センターから技術的な質問に答えることを提案している。「このほか,カメラ付きのパソコンを店舗と本部とのコミュニケーション強化にも役立てることができる。多くの店舗を展開する業態では,スーパーバイザーが複数の店舗間を走り回っているケースがあるが,こうした業務を効率化できるだろう」(大津山CEO)と説明する。

坂口 裕一=日経コンピュータ