ソフトバンク・グループは7月16日,最大12Mビット/秒でインターネット接続できるADSLサービス「Yahoo! BB 12M」の商用化について記者説明会を開いた。そのなかで,ソフトバンクの孫正義社長は,Yahoo! BB 12Mが他社のADSLサービスに通信干渉を与える可能性を否定した。これは一部で出ていた,「Yahoo! BB 12Mが干渉して,他社ADSLサービスの上り通信のスループットが低下するのではないか」という意見に反論したものである。

 Yahoo! BB 12Mは7月1日から試験サービスを開始しており,8月1日に商用サービスに移行する予定。従来のADSLサービスと異なり,下り通信の一部で上り通信と同じ周波数帯域を使う。そのため,Yahoo! BB 12Mユーザーが下り通信をしているときに,他社ADSLサービスのユーザーが上り通信をすると,干渉を起こしてスループットが低下するという意見が出ていた。

 孫社長は,「もし同じ周波数帯域を使っていることで悪影響があるのならば,Yahoo! BB 12Mユーザー自身の上り通信のスループットが低下するはず。実際に測定したところ,ほとんど低下は認められなかった。自分の回線に影響がないのだから,他社のADSLサービスに影響を与えるわけがない」と繰り返した。

 しかし今回,ソフトバンク・グループは,上りと下りの通信を複数のユーザーが同時に行ったときの干渉状況を示すデータを公表しなかった。孫社長が干渉を否定する根拠として公表したデータは,Yahoo! BB 12Mを利用している個々のユーザーのスループット・データだけである。ビー・ビー・テクノロジーの宮川潤一 社長室長もこのデータについて,「上りと下りの通信を同時に行った場合のデータではない」と認めた。

 Yahoo! BB 12Mの試験サービスは約2000ユーザーが利用している。商用化後の月額料金は2653円(NTT回線使用料含む)で,最大8Mビット/秒のサービスより200円高い。また,ADSLモデムをレンタルする場合はレンタル料が月額890円で,同じく200円高くなる。8Mビット/秒のサービスから12Mビット/秒のサービスに乗り換える場合には,モデム自体の交換が必要になる。

鈴木 孝知=日経コンピュータ