システムの連携や統合が情報システム分野で大きなキーワードとなりつつある。こうした中,システム連携を実現するツールである「EAI(エンタープライズ・アプリケーション・インテグレーション)」が注目されている。ただし,EAIの導入や導入後のシステム保守が意外に面倒だという指摘もある。

 この問題を解決することを狙って,ビトリア・テクノロジー(http://www.vitria.co.jp/)は7月,同社のEAIソフト「BusinessWare」用の導入作業を軽減するためのソフト・モジュール「VCA(Vitria Collaborative Applications) for CIM Synchronization」(以下CIM)を出荷する。

 CIMは,BusinessWareを使ってさまざまなシステムを連携させるときに必要な設定内容をあらかじめ登録したソフト・モジュール。製品の受注・在庫確認・生産指示などといった,複数の業務システムにまたがって行われる典型的な業務手順(ビジネス・プロセス)について,あらかじめツールを使って記述してある。さらに,実際の業務処理をする,SAPのERPパッケージR/3やシーベルのCRM(カスタマ・リレーションシップ・マネジメント)ソフトといったシステム群の連携方法も定義した。

 このため,BusinessWareとCIMを組み合わせれば,事前の設定をほとんどせずに,SAP製品やシーベル製品を連携できる。「一概には言えないが,CIMでは,およそ8割の設定は済ませている。残りの2割について,ユーザー企業がおのおののシステム環境やビジネス・プロセスに合わせて設定すればよい」(齋藤真一ビジネス・ディベロップメント ディレクター)。

 EAIソフトが日本で普及し始めて4年近くが経過した。現在,10社以上のソフト・ベンダーがEAIソフトを開発・販売している。普及が進む中,「ユーザー企業がEAIソフトを導入した後に抱える典型的な問題点が次第に見えてきた」(齋藤ディレクター)。

 一般的にEAIソフトでは,システム間のデータ送受信やフォーマット変換,送信するシステムの振り分け(ルーティング)といった設定を「ルール」として事前に設定しておく必要がある。ビジネスのロジックをルールの形で,EAIソフトに登録してしまうので,連携させるシステムが増えれば増えるほど,「ルール」が指数関数的に増大し,次第に収拾がつかなくなる危険がる。ルールの管理に手間取ると,システムの追加やビジネス・プロセスの変更にEAIソフトの設定が追いつかなくなりかねない。

 BusinessWareはソフトの構造として,ビジネス・プロセスやロジックに関わる記述を,データ送受信やフォーマット変換,ルーティングの規定から分離している。これにより,ビジネス・プロセスが変わっても,その記述を変更するだけでよい,

 齋藤ディレクターは,「EAIソフトを導入したユーザー企業の多くは,肥大化したルールの管理に頭を悩ませている。当社は,BusinessWareとCIMを用意することで,設定や運用で余計な手間をかけない,ビジネス・プロセス・マネジメントの仕組みを提供していく」と話す。

 CIMで設定を用意しているパッケージ・ソフトの種類はSAP R/3とSiebel。今後は接続できる製品を順次追加する。CIMの価格は2000万~3000万円。CIMの開発キットも別途提供する予定だ。(高下 義弘=日経コンピュータ