SAPジャパンは今年7月8日から,ERPパッケージ(統合業務パッケージ)「R/3 4.6」の後継版である「SAP R/3 Enterprise」を出荷する。最大の特徴は,R/3のアプリケーション部分を,R/3を利用する企業が共通で必要になる基本的な機能である「コア」と,追加や変更が頻繁に発生する「拡張機能」の二つのモジュールに分けたこと。これまでR/3のアプリケーション構造は一体になっていたので,ある機能を変更すると,その変更によって他の機能に影響が及ぶことが多かった。新版は「R/3を利用する顧客企業は拡張機能を追加することでアップグレードできるので,アップグレードの作業負荷を軽減できる」(SAPジャパンの藤井清孝代表取締役社長)。

 基本機能の部分である「コア」の部分は,現行のR/3 4.6Cをベースにして設計した。今後の修整は品質改善や安定稼働を目指したものに限定していく。例えば,今回の新版では,R/3で設定する通貨の換算レートの変更作業の使い勝手を向上させる程度にとどめた。

 一方,R/3 Enterpriseの拡張機能としては,「人事管理」,「従業員経費管理」,「SCM」,「PLM(製品ライフサイクル管理)」,「ファイナンシャルズ」の五つの分野の拡張機能群をセットにして顧客に提供する。顧客企業は,R/3導入時にこれらの中から必要な機能を選択していく。7月には「人事管理」,「SCM」,「ファイナンシャルズ」の3分野の新機能を用意する。

 R/3 Enterpriseのコア,拡張機能とも,「SAP Webアプリケーションサーバ」上で稼働する。SAP Webアプリケーションサーバは,これまでR/3が稼働する基盤部分である「Basis」と呼ぶミドルウエアに,Webサービスを利用できる機能などを追加したもの。さらにアプリケーションの開発言語として,SAP独自のABAPのほか,Javaが利用できるようになった。

 R/3 Enterpriseの価格体系は,従来のR/3と同じ。R/3のバージョンが3.1I以上のユーザーは直接,R/3 Enterpriseにアップグレードできる。3.1H以下のR/3を利用している企業は,いったん3.1I以上の製品にアップグレードする必要がある。

 なお,SAPジャパンは,3.1Iから4.6BのR/3を利用している企業向けに,2003年12月までの追加保守期間を2004年12月まで特別に延長できるようにする。Enterpriseへの移行を支援するのと,顧客企業の要望に応えるためだ。特別延長期間中は,ラインセンス料の2%を年間保守料金に上乗せする。

西村 崇=日経コンピュータ