米IBMのホーク氏 米IBMでグリッド・コンピューティング事業の総責任者を務めるトム・ホーク ゼネラル・マネジャが日経コンピュータと会見し,「今後は,ビジネス分野向けの事業を拡大させていく」との意向を明らかにした。同氏によると,IBMのグリッド・コンピューティング事業は現在,科学技術分野向けが主で,ビジネス分野向けの売り上げは25%以下しかない。「しかし,2年後には半分,3年後には科学技術分野を追い越すことになるだろう」とホーク氏は展望する。「すでにユーザー企業の動きは始まっている。グリッド技術を使うことでビジネス分野のユーザーは,すでに持っている処理能力の稼働率を高めることができるし,可用性向上というメリットも手に入れられる」と続ける。

 グリッド・コンピューティングは,ネットワーク上に分散する様々なコンピュータを統合して利用する技術。たとえば数百台のパソコンを論理的に統合し,1台のスーパー・コンピュータのように使うことができる。現在は,巨大な計算能力を必要とする科学技術の分野で利用が始まったところだ。IBMも事業化に着手したばかりだが,「将来は,インターネットに続くビジネス・チャンスに育つと期待している」(ホーク氏)。

 ビジネス分野向けの売上高を拡大させるためIBMは,ハード,ソフト,それぞれの製品に,グリッドの機能を取り込んでいく。ISV(独立系ソフト・ベンダー)とも協力し,機能の補完を進める考えだ。「すべてをIBM1社でやるつもりはない。特にソフト分野で業界標準に積極的に準拠していく方針」とホーク氏は語る。ホーク氏は製品強化の具体例は明かさなかったが,相当な額の投資を行うものとみられる。

 IBMはこのほか,営業担当者への教育や,コンサルタントのスキル向上にも力を入れていく。グリッド技術を使った情報システムを社内でも利用することで,ノウハウの蓄積も図る方針である。

森 永輔=日経コンピュータ