九州を基盤とする運送業のトワード物流(佐賀県神埼郡)は,車両管理システム「TRU-SAM(トラサム)」を開発した。カシオ計算機が販売するPDA「カシオペア」を車載端末として利用することが特徴。カシオ計算機とその代理店,および九電工を通じて,5月から運送業者などに販売する。TRU-SAMを利用することで運送業者は燃料費の削減や安全運転の徹底が期待できる。

 TRU-SAMでは,車両の各所に取り付けたセンサーを使い,運行速度,エンジン回転数,走行距離,燃料消費量,貨物室の温度といったデータを1秒に1回ずつ測定。これを車載のカシオペア E-707に送り,グラフ形式などでドライバ向けに表示できる。E-707はNTTドコモのパケット通信サービス「DoPa」の通信機能を内蔵しているので,収集したデータを一定の間隔で集中サーバーに送信する。集中サーバーに格納されたデータは運送会社の本部からインターネットを通じてアクセスし分析することが可能だ。

 「ドライバはE-707の画面に表示される燃費の実績値や速度変動率といったデータを見ることで,より経済的で安全な運転を意識するようになる」(トワード物流の友田健治社長)。速度変動率とは車間距離が短いためにブレーキを頻繁に踏むなどすると高くなる数値だ。

 一方,本部でも車両の運行状況をリアルタイムに把握することができるので,スピードを出し過ぎの車両があれば,メール機能を使って即座に注意することなどが可能になる。トワード物流が自社で利用した実績では車両ごとの燃費が平均20%,最大40%向上したという。E-707にGPSカードを装備すれば,本部は車両の位置を地図上に示しつつ,各種データを分析することもできる。

 荷主向けサービスの向上も図れる。たとえば生鮮品を運ぶ場合に,車両が目的地に到着する前に,貨物室の温度の経過を荷主に報告することなどが可能になる。

 TRU-SAMを利用するためには,トラック搭載用装備と本部用のシステムが必要。トラック搭載用装備は,E-707とGPSカード,センサー一式で1台あたり35万円から。センサーなどの取り付け作業は1台あたり3万円程度の工事費がかかる。本部用のシステムは,モニター・ソフトなど一式で40万円。このほか,集中サーバーの利用料が車両1台あたり月額1500円必要。トワード物流では,今後1年間で40億円(1万台)の販売を計画している。

森 永輔=日経コンピュータ