公正取引委員会は4月12日,NTTデータに対して,独占禁止法に違反した疑いがあるとし「警告」した(http://www.jftc.go.jp/pressrelease/02.april/020412.pdf)。法務省のシステム調達案件において原価を下回る価格で受注し,競争事業者の事業活動を困難にさせる恐れを生じさせる疑いがあると判断したため。警告を受けたのは,2001年11月の日立製作所,2002年2月の富士通に続き3社目となる。

 NTTデータは2001年1月にも,同様の疑いでその他3社とともに公正取引委員会から「注意」を受け,再発防止に努める旨のコメントを出していたが,効果がなかったという格好だ。ここ半年間に,官公庁のシステム調達における上位4社のうち3社が警告を受けるという異例の事態となっている。

 警告の対象となった入札案件は,2002年1月16日に行われた,法務省の「法務省認証局及び総合的な受付・通知システム」で,NTTデータが500万円で落札した。同社は「確かに本件では採算が取れていないが,技術的なノウハウを蓄積したかったということと,将来の案件拡大に対する期待値で価格を決定した」(広報部)と入札価格の決定理由を語り,「このほかに採算が取れていない入札案件はない」(同)とした。

 公正取引委員会は,「業界でも上位の企業が著しく原価を下回る価格で受注するということについて,社会的な影響の大きさを考慮した」と警告の理由を説明した。公取委は今回の警告にあわせて,業界団体である「電子情報技術産業協会」(http://www.jeita.or.jp/)と「情報サービス産業協会」(http://www.jisa.or.jp/)に,会員事業者に対して安値受注を防止するための社内体制の整備を即すよう要請している。

 NTTデータは今回の警告について,「厳粛に受け止め,深く反省するとともに,再発防止及び法令の遵守に取り組む。2002年3月8日には“取引倫理委員会”と“社員行動倫理委員会”を昨今の社会情勢を鑑みて設置している。今回の警告を機に改めて再発防止を周知徹底する」(広報部)とコメントした。

(中村 建助,広岡 延隆=日経コンピュータ)