写真 「ピア・ツー・ピア技術」に関するコンファレンス「P2P Conference in JAPAN」が4月11日,東京都渋谷区のホテルで開かれた。日本でピア・ツー・ピアに関するコンファレンスが業界向けに開催されたのは初めて。

 ピア・ツー・ピア技術は,サーバーを経由せずにネットワークで接続されたパソコン同士が直接ファイルなどをやり取りする技術のこと。米国や韓国など海外では,ピア・ツー・ピアの技術を盛り込んだ製品が続々登場している。だが「日本では発展途上の段階。ピア・ツー・ピア技術を用いたビジネスのあり方などを国内の業界ぐるみで考えていく場を提供したいと考えて開催した」と,P2Pコンファレンスの冒頭で開会の挨拶をしたグローバルメディアオンライン(http://www.gmo.jp/)の熊谷正寿 代表取締役社長は語る。

 コンファレンス会場の講演は,米ナップスターの音楽ファイル交換サービスである「Napster」に関する内容が目立った。Napsterは2000年前後に流行し,会員数が6000万人を突破した。だが,会員がやり取りする音楽ファイルの著作権問題により,2001年7月,裁判所からサービスの差し止め命令を受け,一時はサービス停止に追い込まれた。

 ピア・ツー・ピアの普及を目的とした技術者コミュニティ「Jnutella」の主催者である,ネットイヤーグループ(http://www.netyear.net/)の川崎裕一テクニカル ストラテジストは,米ナップスターが確保したコンピュータ資源が膨大であることを講演のなかで説明した。Napsterのサービスを提供するために自前で設備を用意すると,13兆円以上のハードウエア資金と毎月2000億円以上の通信費用がかかると川崎氏は試算する。「これだけ膨大なコンピュータ資源をわずか20カ月で確保できたことは衝撃的なこと。ピア・ツー・ピアには,既存のシステムでは考えられない可能性を秘めている」と語った。

 一方,ピア・ツー・ピアを使った無線技術を開発しているスカイリー・ネットワークス(http://www.skyley.com/)の梅田英和代表取締役は,Napsterのビジネスモデルの問題を指摘。「ピア・ツー・ピアでビジネスを進めるには,ユーザー認証やセキュリティ,課金といった機能が必要不可欠。だがNapsterでは,セキュリティと課金の機能を備えていなかった。これでは収益を上げられない」と解説した。

(西村 崇=日経コンピュータ)