NECソリューションズの芳山執行役員常務 NECは4月10日,インターネット事業「BIGLOBE」の事業説明会で,収益向上をねらったサービスの強化戦略を打ち出した。主に有料コンテンツの充実に力を入れる。NECソリューションズの芳山憲治執行役員常務は,「有料のコンテンツを見てくれる人が多くなれば,会員全体の増減を気にしなくなる時がくるかもしれない」という認識を示す。「価値のあるものには出費を惜しまない傾向が消費者に見られる。今後は価格競争ではなく,価値の競争になるだろう」と予測する。

 BIGLOBEのユーザーは順調に増えている。接続サービスの会員数こそ405万人(今年2月末時点)と,ここ数年で頭打ちの状態にあるが,付加価値サービスのユーザーが908万人(同)もいる。その結果,2001年度(2001年4月~2002年3月)のBIGLOBE事業は,単年度黒字を達成した。NECは,利益をさらに増やすには,付加価値サービスのユーザーをいっそう獲得すると共に,有料コンテンツの利用を促進することが必要と判断した。

 そこでNECは「携帯電話とパソコンは国内シェアが1位,ISP事業も2位」という強みを生かしたサービスも展開していく方針だ。NECの携帯電話のユーザーがBIGLOBEに入会する流れを作り,NECの携帯電話機と親和性の高いサービスを展開することを目論む。「BIGLOBEのメール・アドレスをNECの携帯電話から利用可能にするサービス」や「BIGLOBEが管理しているサーバー上に企業独自の業務用ポータル・サイトを構築し,NEC製携帯電話からボタン一つでアクセスできるようにする」といったことを考えているようだ。

 さらにNECの芳山執行役員は「携帯電話端末が自由化されれば,自社で使い勝手を改善できる。端末とサービスの提供の両面で新たなビジネス・チャンスが生まれるだろう」と期待する。現状は,通信事業者が定めた仕様に従って携帯電話端末を製造せざるを得ないため,NECの独自性を打ち出しにくい。

 とはいえ,携帯電話端末の自由化のメドは今のところたっていない。さらにNTTドコモのiモード網とBIGLOBEを接続したサービスが始まるのは早くても年末だ。この当たりはNECの芳山執行役員も十分認識しており,「今年度はインキュベーションの段階。すぐに利益を生むようにはならない。具体策は来年になったら話せるだろう」と述べるにとどまった。

坂口 裕一=日経コンピュータ