フュージョン・コミュニケーションズ(東京都千代田区)は,今夏をメドに一般ユーザー向けのIP電話サービスを開始する。同社はこれまで自社が管理するIP網を利用し,NTT地域会社の電話網を足回りに使って,市外電話と国際電話のサービスを提供していた。新サービスではユーザーは専用のIP電話機,通常の電話を接続するIP電話用アダプタ,あるいはパソコンに内蔵する専用ソフトを利用することで,一般の固定電話や携帯電話に電話をかけたり,受けたりできる。
本サービスに先がけてフュージョンは,4月1日からIP電話機やIP電話用のソフトを開発するベンダーを募集し,これらのベンダーとの間で実証実験を5月1日から7月末まで行う。実験に参加するベンダーは現在のところ未定。
同社のIP電話サービスは,SIP(セッション・イニシエーション・プロトコル)という標準規格を利用する。受話器の上げ下げの状態を管理したり,音声データを相手まで転送するための制御を行う規格で,機器やソフトのベンダーからSIPに準拠した製品が提供される。同社の角田(すみだ)忠久社長は,「IP電話機だけでなく,パソコンに搭載するソフトやテレビ電話機などが考えられる。IP電話サービスを中心とした,新たな市場ができるだろう」と期待している。
フュージョンの基幹IP網とユーザーを接続する足回り回線には,ADSLなどのブロードバンド接続サービスや,一般のインターネット接続サービスを利用する。「フュージョンのネットワークとADSL事業者のネットワークを十分な容量の専用線などで接続することで,通話の品質を確保する。しかし一般のインターネットを経由した場合は,転送速度が遅くなることもあり,品質は保証できないだろう」(角田社長)。
料金は未定だが,「現在提供している市外電話サービスの料金(全国均一で3分20円)は下回るだろう」(角田社長)という。将来的にフュージョンはIP電話サービスを生かして,ある番号にかかった電話を出張先のオフィスやパソコンなどに転送したり,留守番電話のメッセージを電子メールに添付して送信する,といったユニファイド・メッセージ・サービスの提供や,オペレータが在宅で仕事ができるコールセンター・システムへの展開を見込んでいる。