千葉県の市川市は5月にも,各種証明書の発行や施設予約,行政相談など,異なる部課が担当する手続きを,住民から見て“ワンストップ”で処理できる新端末の設置を開始する。第1弾として,JR本八幡駅前の「情報プラザ」に新端末を設置する。今後は,市役所外のさまざまな拠点に設置していく考えだ。

 “ワンストップ端末”を設置することで市川市は,縦割り行政の改善を目指す。市川市に限らず多くの地方自治体の役所内の窓口は,部課ごとに分かれており,住民は特定の窓口でしか手続きができないのが一般的である。

 市川市が設置する新端末はパソコンをベースにしたもので,住民がタッチパネルの画面で必要な手続きのメニューを選ぶと,市役所の窓口にいる各種手続きの担当者とネットワーク経由で会話ができる。会話用のソフトウエアとしてマイクロソフトの「NetMeeting」を使う。窓口担当者の机上にも,NetMeetingが利用可能な端末を新規に設置する。手続きの依頼を受けた担当者は,従来から利用している業務系端末を使って処理を行う。

 今回の新端末は,人が介在して擬似的にワンストップのサービスを提供するものであり,利用者が様々な業務システムに直接アクセスできる厳密な意味でのワンストップ端末ではない。「1台の端末から様々な業務を処理できるようにするためには,業務システムを大きく作り変える必要がある。しかし,それは容易にはできない」(市川市の井堀幹夫企画政策部情報システム課長)。そこで市川市は,現行の業務システムを大きく変更しないですむ擬似的なワンストップ端末を設置することにした。

 これまで市川市は,各種施設の予約ができるキオスク端末を千葉県内外のコンビニエンス・ストアに600台以上も設置するなど,住民サービスの電子化で先行している。同市はこのキオスク端末に比べて,住民がより多くの手続きを1カ所で受けられる新端末を設置することで,住民サービスの一層の向上を図る。

森 永輔=日経コンピュータ