「富士通と米IBMが企業向けコンピュータで提携,ソフトを相互供給し,OSなども共通化」――。読売新聞が3月20日の朝刊1面に掲載した“スクープ記事”は,同紙を購読しているIT業界関係者をさぞかし驚かせたことだろう。だが,3月21日,富士通と日本IBMの広報担当者は報道内容を全面的に否定した。

 日経コンピュータの問い合わせに対して,富士通の広報担当者は「IBMとは今までもEJBやLinuxといった個別分野で提携しており,個別提携は今後もありうる。だが,読売新聞が報道したような包括提携の交渉をしている事実はいっさいない」と語った。日本IBMも「“憶測”についてはコメントできない」(広報担当者)という表現で,富士通と同様に報道内容を否定した。

 両社の全面提携に関する記事が新聞一面を飾るのは,昨年10月18日の日本経済新聞朝刊に続いて2度目。この際も富士通は報道を全面否定している。だが同じような趣旨の報道が半年間に2度も続くと,「両社の経営トップ・クラスが水面下で包括提携の交渉をしているのではないか」と勘ぐりたくもなる。事実,IT業界内では「IBMが富士通にIAサーバー用チップセットを供給する」とか,「富士通が独自開発したSPARCプロセサの製造をIBMに委託する」といった観測が絶えない。

 なお,富士通は昨年10月の日経報道の際には,東京証券取引所からの要請を受けて,事情説明をした。しかし今回は「株価がまったく反応しなかったためか,東証からの要請は来ていない」(広報担当者)と言う。

星野 友彦=日経コンピュータ