「企業内ポータル構築の市場を日本で立ち上げるには,企業文化自体を変えさせるような提案力が必要だ」。こう語るのは,NTTデータの齋藤洋ビジネス企画開発本部企業ポータルプロジェクト・リーダー。同社はコンピュータ・アソシエイツ(CA)のポータル構築ツール「CleverPath Portal」の代理店としてこれまで約2年間販売してきたが,自社や関係会社への導入を除くと初めての構築事例が,ようやくこの4月に稼働するところだ。

 「米国では企業内ポータルによって“従業員1人あたりの情報収集時間が1日5分減る”,“情報管理者が1人減る”といった効果が得られるとして,どんどん導入が決まっている。だが日本企業では,情報システム部門が2~3カ月試用してみて有効性を実感しても,経営者にはメリットを訴求できず,結局“不景気のいま,導入を急ぐ必要性はない”と却下されがち。最近も3社ほどに試用版を提供していたが,結局この年度末で見送りになってしまった」(齋藤リーダー)と苦戦している。

 齋藤リーダーは日本企業に企業内ポータルの導入が進まない理由を,社内で発信・共有される情報自体の不足にあると見る。「米国ではKM(ナレッジ・マネジメント)やOLAP(オンライン分析処理)の導入を経て,そこからの情報を従業員が効率よく活用するために企業内ポータルの導入が進んでいる。情報を“見せてナンボ”の米国企業に対して,“隠してナンボ”の文化の日本企業はKMやOLAPの導入も進んでおらず,ポータルに表示させるコンテンツがない」(同)。

 CAは4月からCleverPath Portalの新版(3.51日本語版,112万5000円から)を出荷し,掲示板型の情報共有機能や性能向上,KDDI(au)の携帯電話などで使えるWAP対応(5月出荷予定)といった製品強化を図る。併せて,現在はNTTデータと富士ソフトABCの2社だけの販売代理店に,国産メーカー系のインテグレータ3社程度を加え,販売を強化する方針。無償での試用制度や,他社のポータル構築ツール・ユーザー向けの特別価格,500~1000人規模の初期導入段階向け特別価格(350万円程度)などのマーケティング策も計画している。

 これまで苦戦してきたNTTデータは,独自にCleverPath Portal用のシングル・サインオン機能部品の開発や,コンテンツ提供者との提携などの付加価値を加えることで,今後1年間で60サイト程度のユーザー獲得を見込んでいる。同社の齋藤リーダーは「CleverPath Portal自体は,Webアプリケーション・サーバーやOLAPツールなどの連携相手を問わない。価格も競合製品より安いし,使い勝手もいい」と,製品力には自信を見せる。「今後は“企業内ポータルを導入することが,従業員の情報発信マインドを高めることにつながる”と訴求していきたい」。齋藤リーダーは顧客の企業文化自体を変える提案に望みを託している。

千田 淳=日経コンピュータ