インターネットを管理する非営利民間企業「ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers,[用語解説])」が衝撃的な組織改革案を公表して以来,初めて開催された定例会議(開催地はガーナのアクラ)が14日に閉幕した。

 組織改革案とは,「インターネット・ユーザーによる直接選挙での理事選出を廃止し,その代わりに各国政府が地域ごとに理事を選出する」というもの。財政難にあえぐICANNのスチュアート・リン社長兼CEO(最高経営責任者)は今回の会議で,「民間組織がインターネットを安定的に運営していくことは困難。もはや限界に達した」と訴えた。

 昨年10月の直接選挙で,アジア太平洋地域から唯一選出されたICANNの加藤幹之理事は,今回の会議について日経コンピュータにコメントを寄せてくれた。内容は以下の通り。

 「人類史上初めて世界規模の電子投票によって理事に選ばれた一人として,選挙の重要性は痛感している。しかし,リン社長が今回の会議で打ち出した改革案は,ICANNの組織・運営全体の見直しを促すものだ」。

 「ICANNはわずか3年で数多くの成果をあげたが,それ以上に課題も多い。今のままでは,米国政府が再びインターネットの管理権を取り戻す,といった話が出る恐れもある。当面,選挙は行われない可能性が強いが,オンブズマン制度や渉外部門の設置により,世界の人々が参加する機会を増やすことができると思う」。

 「改正案をさらに審議する今年6月のブカレスト会議に向けて,世界の人々の手でインターネットを運営するには今後どうしていくべきかを,皆で真剣に考えるべきだ」。

井上 理=日経コンピュータ