宇宙開発事業団,日本原子力研究所および海洋科学技術センターは3月15日,3月末に本格的な稼働を開始する「地球シミュレータ」を報道陣に公開した。地球シミュレータは5120個のプロセサを搭載し,理論上の最高性能が40テラFLOPS(浮動小数点演算/秒)に達するという,驚異的な処理能力を誇るスーパーコンピュータ。これはパソコン10万~20万台に匹敵する性能だ。

 2月末に始まった試験稼働では,全プロセサの半数に当たる2560プロセサを使用した。その結果,14.5テラFLOPSの実行性能が出ることを確認した。「5120個のプロセサをすべて使っても,実行性能は5テラFLOPS程度とみていた。ところが,半数のプロセサでその3倍の性能を記録したので驚いている」(海洋科学技術センターの佐藤哲也 地球シミュレータセンター長)。この処理能力によって,「大気や地殻,海洋の変化を,地球規模でシミュレーションできる。地震や気候変動の予測など,日常生活に役立つ研究が可能になる」と佐藤センター長は説明する。

 地球シミュレータは,演算処理を担当する「計算ノード」640台と,計算ノード同士を接続するためのネットワーク機器65台で構成。これを約3000平方メートルのフロアに設置している。

 計算ノードには,最大8ギガFLOPSのNEC製プロセサ8個と共有メモリー16ギガバイトを搭載。きょう体のサイズは,幅と奥行きが1~1.4メートル,高さが2メートルである。計算ノードとネットワーク機器は,通信速度12.3ギガバイト/秒のネットワークで結ばれている。利用したケーブルの総延長は2800キロメートルに達するという。

 試験稼働では,地表を約10キロメートル四方に区切り,大気や海流の変化をシミュレーションした。これは世界初の試みだという。地球上の1日の大気の流れをシミュレーションしたところ,処理はわずか約40分で完了した。

 地球シミュレータの開発は1999年度にスタート。開発費用は総額400億円に上る。

西村 崇=日経コンピュータ