カルロス・ゴーン社長(右)と立川啓二社長(左) 「車の中でも自宅や会社と同じような環境を用意する」(日産自動車のカルロス・ゴーン社長,写真右),「動くものすべてにネットワーク端末を搭載し,社会を“ユビキタス化”したい」(NTTドコモの立川敬二社長,写真左)――日産自動車とNTTドコモは2月19日,テレマティクス・サービス(自動車向け情報提供サービス)で共同研究を進めることを発表した。

 両社は,以下の3点に関して研究を進める。(1)ドコモの第3世代移動通信サービス「FOMA」回線を使用した専用車載端末や通信インフラの開発,(2)自動車へ各種情報を提供するサービスの開発,(3)日本国内でのビジネス展開方法の検討。サービスとして,電子マネーを用いた車内ショッピング,ビデオ放送,事故時の損害保険会社への連絡サービス,自動車の現在位置に応じた地域情報の提供などを想定している。研究の成果を生かし,2003年以降にサービスを提供する計画だ。

 大手自動車メーカーは,競ってテレマティクスの研究に乗り出している。トヨタ自動車は米ゼネラル・モーターズ(GM)と,ホンダはNTTと共同で進めている最中だ。特にホンダは日産と同様,ドコモのFOMA回線を使う予定。これについてドコモの立川社長は「自動車メーカーに対しては全方位外交で臨む。日産とは共同で研究をするが,FOMA回線はすべての自動車メーカーに使っていただきたい」と話す。日産も,特定の回線に固執しない考えだ。他のキャリアが提供する回線やサービスを利用したり,無線LANによる通信が可能な端末の開発も考えているという。

 日産は,来週発表する小型車の新型「マーチ」にテレマティクス端末を搭載する。ただし,この端末はFOMA回線ではなく第2世代の通信回線を使うため,機能が限られている。今年中に,5車種に対してテレマティクス端末を搭載する予定。車載端末の価格は5万円以下,各種サービスの使用料は月額制で数百円程度になる見通しである。研究成果を示す2003年のFOMA回線によるサービス開始まで「一歩一歩進んでいく」(ゴーン社長)。

矢口 竜太郎=日経コンピュータ