「コンピュータ業界にはCRMやERPといった“3文字英語”をはじめ,何を意味するのかがまったく分からない言葉が氾濫している。これが業界の発展を妨げる大きな原因になっている」。こう苦言を呈するのは,インターネット証券最大手の松井証券の松井道夫社長。日ごろから歯切れがよい発言で知られる松井社長だけに,その矛先はITベンダーやマスコミにも向かう。

 松井社長は「ベンダーやマスコミは,海外で使われている略語を,何も考えずにそのまま持ち込んでいるだけ」と手厳しい。「それではダメだ。言葉の本質を理解した上で,お年寄りにも分かるような日本語に置き換えるべきだ」と続ける。

 松井社長は日本語で表現することのメリットをこう説明する。「政治家のスピーチなんて,同じような話を長々と繰り返しているだけ。それでも日本語であればこそ,聞いてる方はなんとなく理解した気にさえなる」。例え話に使われた政治家はたまったものではないが,一面の真理を突いている。

 松井社長の矛先は,他社の経営者にも向かう。「利益を出すことができない企業の社長なんて,なんの発言権もない」と一刀両断。「万が一当社が2年間連続で赤字を出した場合は,スパッと社長の座を降りる」と宣言した。ちなみに松井証券の2001年3月期の経常利益は29億8900万円。2002年3月期も増益はほぼ確実。第3四半期までで前年同期比151.4%の32億8600万円の経常利益を上げている。ちなみに松井証券以外に黒字を計上する証券会社は,最大手の野村証券など数社に限られる見通し。

大和田 尚孝=日経コンピュータ