日本音楽著作権協会(JASRAC)は1月29日,不特定の個人同士がインターネットを介して直接MP3ファイルなどを交換できるサービス「ファイルローグ」を提供する日本エム・エム・オーに対して,市販の音楽CDから複製されたMP3ファイルの交換中止を求める仮処分を,東京地方裁判所に申請した。「違法なサービスはどんどん深刻化している。音楽業界にとってはまさに,歴史上最大の危機」とJASRACの加藤衛常務理事は語る。同協会の吉田茂理事長も「市販の音楽CDを複製したMP3ファイルを無制限に交換する行為は,著作権を侵害している。このような不正コピーは,著作権者の将来の夢を摘むことになる」と怒りをあらわにする。

 日本レコード協会(RIAJ)もファイルローグがレコード製作者の送信可能化権を侵害していると判断。同協会が音頭をとってレコード会社19社が1月29日に,JASRACと同様の仮処分を申請している。「このまま放置すれば被害がどんどん深刻になると考え,仮処分の申請を急いだ」(RIAJの富塚勇会長)。

 両協会の主張はこうだ。「日本エム・エム・オーのサーバーと,同社が配布しているクライアント・ソフトが連携することで,ファイル交換ができる仕組みになっている。これは日本エム・エム・オー自らが,ファイルの不正コピーという違法行為に協同して加担していることになる」(仮申請を担当した前田哲男弁護士)。「不正コピーを実施しているのはあくまで利用者であって,ファイルローグは単にその場を提供しているだけ。違法ではない」という日本エム・エム・オー側の主張を切り捨てる。

 今後両協会は,可及的速やかに損害賠償の請求も予定しているという。さらには「利用者への責任追及も検討中」(JASRACの加藤常務理事)とする。

大和田 尚孝=日経コンピュータ