「VoIP(Voice over IP)の仕組みを導入すれば通信コストを削減できる,というのは大きな勘違い」。NTTデータの松田次博ビジネスソリューション事業部ネットワーク企画部長はこう断言する。日経コンピュータが1月29日に開催したセミナー「次世代の企業ネットワーク構築法」の基調講演での発言である。
 
 最近は拠点間ネットワークの再構築に併せて,データと音声通信を統合する「VoIP機器」を導入し,拠点間の内線電話網を廃止する企業が増えている。松田部長も「広域LANのように,音声パケットを問題なくやり取りできるネットワーク・サービスが増えている。遅延防止やパケット漏れ防止などの技術も成熟してきた」とVoIPの技術基盤が確立しつつあることは認める。

 しかしVoIP機器の価格と導入には,1拠点当たり数10万円は最低かかる。これに対して,「キャリア(通信事業者)間の競争によって,電話料金はどんどん下がっている。電話料金の低下トレンドを考えると,ほとんどの企業はVoIP機器の元をとることができないだろう」と松田部長は予測する。

 このほか松田部長は,VoIP機器の今後の動向についても語った。PBXにVoIPのインターフェースを付加した「IP-PBX」と,汎用サーバーなどが電話交換機能を持つ「IP-UnPBX」を比較し,「今後はIP-PBXが主流になる」と予測する。「電話は短時間の中断・故障でも業務に致命的な影響を与える。汎用OSを搭載したサーバーに電話システムを任せるのは,安定性やセキュリティの面で不安がある」(松田部長)からだ。

鈴木 孝知=日経コンピュータ