UFJ銀行は1月28日夕方に緊急会見を開き,1月23日から絶え間なく発生していた口座引き落とし処理の遅れの原因や被害件数などを説明。新たに,預金の二重引き落としと引き落とし漏れが発生したことも明らかにした。

 口座引き落とし処理の遅れは,「口座振替システム」の不具合や処理の不手際があったために発生した。具体的には,口座振替システムで実施した引き落とし処理の結果を,電力会社やクレジット・カード会社ごとに自動集計するシステムの処理や,磁気テープやフロッピ・ディスクに格納する人手の処理が遅れた。この結果,1月25日までに合計175万件の引き落とし処理が遅れたうえ,電力会社など約1500社の取引先に対して,処理結果を正常に引き渡せなかった。

 UFJ銀行は通常,引き落とし処理を実行する前に,電力会社やクレジット・カード会社から顧客の口座番号や引き落とし金額などのデータを受け取る。その後,複数の企業から受け取ったデータを集約して引き落とし用のデータを作成。夜間にシステムで引き落とし処理を開始し,翌日の営業が始まるまでに終了する。その後,処理結果を電力会社やクレジット・カード会社が要求するデータ形式に変換し,磁気テープやフロッピ・ディスクに格納して送る。

 ところが,UFJ銀行が発足した翌日の1月16日に,引き落とし処理結果の自動集計に約2時間程度の遅れが発生。これがきっかけとなり,磁気テープに処理結果を格納したり,翌日分の引き落としデータを作成するなどの工程に次々と遅れが出た。そしてこの遅れを取り戻すことができず,1月23日,ついに約45万件の引き落とし処理が間に合わなくなった。引き続き24日には20万件,25日には110万件の引き落とし処理に遅れが出てしまった。

 今日の会見でUFJ銀行の中村正人常務執行役員は,「28日分の引き落とし処理は正常に終えた」と発言。29日以降に再び処理の遅れが発生する可能についても,「明日以降,処理が遅れることは絶対にない」(中村常務)と断言した。ただし,処理結果を磁気テープなどに格納する処理が正常化する時期は,2月中旬になる見込みだ。

 一方,今日明らかになった二重引き落としと引き落とし漏れの原因は,口座引き落とし処理の遅れを解決する際に犯した人為的なミス。被害件数は,それぞれ二重引き落としが約18万件(約28億8000万円分),引き落とし漏れは約5000件。このうち二重引き落とししたものについては,すべてのデータを取り消すことで対処する。引き落とし漏れについては,電話会社やクレジット・カード会社などと相談して,再引き落としなどの処理をする。

栗原 雅=日経コンピュータ