「NTTの局舎には,もっとスペースがある。例えば,喫煙コーナーや食堂が,大事な有限の場所である局舎内にあるのはおかしい。そもそも局舎内は禁煙にしろと言いたいし,食事も外に行けばよい」。ソフトバンクの孫正義社長は12月20日,NTT東西地域会社の局舎におけるコロケーション・スペース(機器の設置場所)の問題について,NTT側の努力次第でスペースは広がるという認識を明らかにした。

 孫社長の発言は,総務省が12月19日に行ったADSLサービスのコロケーションに関する公聴会をうけてのもの。Yahoo!BBのインフラを担当するビービーテクノロジー(BBT)は,NTT局舎のコロケーション・スペースや局間を結ぶ光ファイバ回線を大量予約している。これに対し,イー・アクセスやアッカ・ネットワークスなどの“競合”事業者は公聴会で,「このままでは事業継続が不可能になる。未使用のスペースや回線をヤフーは返還すべき」と求めた。

 コロケーションの問題に関しては,NTT東西がコロケーション・スペースや光ファイバを事業者に対して公平に提供することを狙って,接続約款の変更を総務省に申請していることもあり,ソフトバンク・グループが矢面に立たされた格好だった。接続約款の変更案には,コロケーション・スペースを確保してから実際に使用するまでの保留期間を短縮することなどが盛り込まれている。

 しかし,公聴会で孫社長は「計画の進行次第で自主的にスペースを返還することはあり得るが,他社にスペースの上限を決められたり,過去にさかのぼって約款を適用(遡及適用)して強制的に返還させられるのは,おかしい」と真っ向から対立。一夜明けた20日のソニー・コンピュータエンタテインメントとの提携発表の場でも,孫社長は改めて反論した。

 孫社長はコロケーション・スペースの大量予約について,以下のように正当性を主張した。「ADSL接続事業だけが目的ではない。今日の発表や先日発表したIP電話サービス事業など,複合的なサービスを見据えてのスペース確保だ。ストリーミングなどの負荷が一気に集中しても耐えられるように,全局舎にコンテンツ・サーバーを設置することも考えている。加えて,今は言えないが今後もADSLに関連した新サービスをたくさん打ち出すつもりなので,決して無駄に確保しているのではない」。

 さらに,「そもそも,eジャパンで掲げた4000万世帯に達していない今の段階で,局舎のスペースがもうない,というのはおかしな話だ」として,「有限の場所に喫煙コーナーがあるのはおかしい」とする冒頭のコメントが続いた。接続約款の変更分を遡及適用された場合はどうするのかという問いに対しては,「法治国家では考えられないこと。万が一あれば,当然損害賠償を考えるが,そんなことはないと思う」と語った。

井上 理=日経コンピュータ