アイオナのライマー氏 「Webサービスを使ってシステム統合をする企業は,今後急速に増えていく。アメリカでは,2002年に大手企業を含むいくつかの企業がWebサービスを導入し始める。保守的な会社であっても2004年にはWebサービスの利用を始めるだろう」。アイルランドのアイオナテクノロジーズ(http://www.iona.com/)で製品マーケティングを担当するジョン・ライマー バイス・プレジデントはこう断言する。

 同社は,CORBA(Common Object Request Broker Architecture)準拠のミドルウエア「Orbix」の開発元として知られる。現時点でも「売り上げの多くはCORBA製品から上げている」(ライマー氏)。しかし,この11月に「Webサービス統合(Web Service Integration)」と呼ぶ新概念を提唱するとともに,Webサービスによるシステム統合を支援するミドルウエア製品群「Orbix E2A」を発表。今後は「Webサービスの会社」であることを強調していく方針だ。日本では,日本アイオナテクノロジーズ(http://www.iona.co.jp/)が12月25日からOrbix E2Aを順次出荷する。

 「多くの企業が,異なるハードやソフトをどのように統合するかで頭を悩ませている。そのための解決策としてEAI(エンタプライズ・アプリケーション・インテグレーション)ツールが登場したが,特定のアプリケーションにしか対応していない,コストが高すぎるといった難点がある。Webサービスをシステム統合に用いることで,これらの問題を解決できる」と,ライマー氏は語る。ただし,Webサービスを企業システムで用いるには,セキュリティやトランザクション管理をどう実現するか,一連のWebサービスの処理の流れをどう定義するかといった課題がある。

 ライマー氏は,「Orbix E2AはOrbixなどで培ってきたノウハウを生かして,それらの問題を解決できるようにした製品」であることを強調する。特に,「Webサービスのプロセスを定義する機能を備えた製品は他社にはない」という。「企業内システム統合の分野にWebサービスの概念を持ち込んだのは,当社が初めてと自負している。この分野におけるリーダーシップを確保し続けたい」と意欲を見せる。

 Orbix E2Aは,OrbixやWebアプリケーション・サーバー「iPortal Application Server」,XML/SOAPをサポートするミドルウエア「XML Bus」などの既存製品を統合・整理して,Webサービスに対応した機能を追加したもの。システム統合の基盤となる「Webサービス・インテグレーション・プラットフォーム」(3製品)と,Webサービスを利用したアプリケーションの開発を支援する「アプリケーション・サーバー・プラットフォーム」(3製品)で構成する。日本アイオナテクノロジーズの斉藤信也社長は,「現在,販売パートナはNEC,TIS,東芝の3社。2002年6月末までに新たに5~10社増やしたい」と語る。

矢口 竜太郎=日経コンピュータ