「自社のECサイトをリニューアルしてみて,いかに以前のWebサイトが利用者のことを考えていない“高飛車”なサイトであったかを痛感した」。8月24日に花を販売するECサイトのリニューアルを実施した日比谷花壇(http://www.hibiyakadan.com/)の五十嵐豊EC事業部副部長は,こう自省する。

 日比谷花壇のECサイトでは,クリスマスや誕生日のお祝いなど用途や予算に合わせて花のギフトを探すことができる。オリジナルのメッセージを添付することも可能だ。代金の支払いには,クレジットカードによる決済を採用している。

 同社が旧サイトで実施した調査によると,サイト訪問者が1回当たりに見るページ数は予想していた10数ページよりもはるかに多いことが判明したという。「ある月には,平均35ページにも達することもあった」(五十嵐副部長)。

 この結果の判断には注意が必要だと,日比谷花壇は警告する。「単に顧客がECサイト内の豊富なコンテンツを楽しんでいると安易に考えてしまうと,それが高飛車サイトにつながる」(五十嵐副部長)。日比谷花壇は「ECサイトの作りが悪いために,顧客がサイト内で迷子になっている」と判断した。これがECサイトのリニューアルを後押しすることにもなった。

 ECサイトの落とし穴はほかにもあるという。「売上げが伸びているからといって,ECサイトが順調だと決めつけるのは危険だ。現状に満足していたらいつの間にか売り上げが大幅に落ち込んでしまった,という失敗談を耳にすることが少なくない。顧客の不満や苦言を積極的に取り入れ,反映していくことが重要だ」(五十嵐副部長)。

 こうした考えのもと,日比谷花壇は旧サイトの見直しを実施した。「多頻度多品種小ロットのサービスを提供することを目指して,試行錯誤を重ねた」(五十嵐副部長)。具体的には,少ないクリック数で顧客の要求に応えるためのシナリオを考えた。さらに顧客満足度を高められるように,業務プロセスの改革,検証を繰り返した。「たとえば,顧客が季節のお花を欲しがるとする。そのためには商品の情報を毎日入れ替える必要がある。この場合,ECサイト管理の負荷をできるだけ少なくなるように業務を改善した」(五十嵐副部長)。

 176カ所にも及ぶ改善の結果,新ECサイトは「リニューアル日以降,前年比250%以上の販売実績を確保している」(五十嵐副部長)。サイト訪問1回当たりの閲覧ページ数は再構築前の約27ページから約15ページと半数近くに減少。購買を途中で取り止める割合も,約90%から約40%へと激減した。

 日比谷花壇は以前から,オンラインでの商品販売ビジネスに意欲的に取り組んできた。その歴史は1980年代のキャプテンシステムへの出店にもさかのぼる。ECサイトの老舗と言える同社は,ECサイトを繁盛させるための秘訣を「熱い情熱と自らの商品に誇りを持つことが欠かせない」と締めくくる。

大和田 尚孝=日経コンピュータ