CDN JAPANの発足会見より インターネットイニシアティブ(IIJ),日本オラクル,シスコシステムズなど8社はコンテンツのストリーミング配信を実験する組織「CDN JAPAN」を発足,11月13日から活動を開始した。配信用の大規模システム「CDN-Jプラットフォーム」の稼働実験を通じて,コンテンツの配信方法だけでなく,ユーザー認証と課金などが連動して処理できるかどうかを検証する。CDN JAPANの発足会見で,IIJの鈴木幸一社長は「ブロードバンド時代には,コンテンツ配信業者が安心して配信できる,確かなプラットフォーム作りが必要。今回参加各社の技術を結集させてその仕組みを作り上げ,ようやく検証実験までこぎつけることができた」と語った。このほか会見には,オラクルの新宅正明やシスコの黒澤保樹社長など,豪華なメンバーが顔をそろえた。

 実験では,CDN-Jプラットフォームと連携する専用サイト(http://www.cdn-japan.com/)上でコンテンツを公開する。映画の予告編やアニメーション,音楽アーティストのビデオクリップなど約150のストリーミング・データを用意する。毎月30本程度のコンテンツを更新していく。コンテンツの閲覧は,年内は無料。来年1月からは,課金の実証実験もかねて,有料コンテンツを追加する予定。実験は来年3月まで続ける。

 利用するユーザーの通信状況に合わせて,300kビット/秒と1Mビット/秒の2種類の通信速度で利用できるように圧縮したストリーミング・データを用意する。Windows Media Player,またはRealPlayerのいずれかで閲覧できる。スカイパーフェクト・コミュニケーションズやジェイ・スカイ・スポーツ,MTVジャパンなどがコンテンツ配信を予定している。

 一方,実証実験に参加できるのは,「IIJ4U」と「So-net」をADSLで利用しているユーザー,およびIIJのバックボーン回線に接続しているケーブルテレビ会社のインターネット接続サービスのユーザー。最大25万人に達するという。

 今回の実験では,配信したコンテンツの不正利用防止策の有効性や,ネットワークやサーバーを含む,配信システムの信頼性についても検証していく。このうち不正利用防止策としては,ユーザーごとに利用できるコンテンツを認証する機能を用意する。

 認証はIIJのデータセンターに設置したCDN-Jプラットフォームの機能を利用する。CDN JAPANの専用サイトからパソコンにダウンロード済みのコンテンツを閲覧する際にも,CDN-Jプラットフォームに閲覧可能かどうかをインターネット経由で照合する仕組みを取り入れた。認証機能や,ユーザー情報やコンテンツ情報の管理機能は,Oracle9i上に作り込んだ。

 認証機能は,ユーザー認証,コンテンツ認証,サービス認証の3段階で構成する。まず,ユーザーIDやパスワード,利用するプロバイダ名でユーザーを認証したあと,閲覧をするコンテンツを公開して良いかを確認するコンテンツ認証を行う。コンテンツ認証では,配信業者が設定した「R15指定」や「限定地域」などの管理情報を,ユーザー情報と突き合わせて調べる。最後に,配信業者がビジネスとしてユーザーに配信を許可しているかをチェックする「サービス認証」をする。すべての認証が通ったときに,はじめてコンテンツをユーザーに配信する。

 実際のコンテンツ配信には,ネットワークの負荷を軽減する仕組みであるCDN(コンテンツ・デリバリ・ネットワーク)を利用する。認証を受けたユーザーは,アクセスポイントに近いキャッシュ・サーバーからコンテンツをダウンロードできる。実験は,シスコ製のキャッシュ・サーバーを当初は3台設置する。

 CDN-Jプラットフォームは,コンテンツ配信業者に対する分析機能も用意する。たとえば,アクセスが多かったコンテンツのランキングを表示したり,どの年齢層のユーザーがどの時間帯にコンテンツを利用したかといった分析を表やグラフにまとめることができる。

西村 崇=日経コンピュータ