日立製作所が,野村総合研究所(NRI,東京都千代田区)の買収を検討しながら,断念していたことが明らかになった。コンピュータ事業のソフト/サービス・ビジネスの拡大を目的にNRIの買収を検討したものの,「時期が遅すぎた。すでにNRIは株式上場の方針を固めていた」(日立役員)という。日立は買収を検討した時期を明らかにしていないが,2000年度前半だったと見られる。NRIは当初,今年10月に株式上場を予定していたが,9月11日の米国同時多発テロの影響で上場を延期している。
短期間でソフト/サービス・ビジネスを拡大するためには,内部の人材育成だけでは対応しきれないと判断したのが,買収を検討した理由だった。日立は,2000年3月末時点では4300億円を超す現金および預金を所有しており,資金面で余裕があったことも企業買収を検討する一因だったと見られる。2001年3月末時点では,同社の保有する現金および預金は1800億円弱にまで減少しているが,同社役員は「今後も良い案件があれば,積極的に買収を検討する」と語る。
日立は,2000年10月に米国の大手会計事務所のコンサルティング部門を買収したのを手始めに,今年5月には水戸証券のシステム子会社である水戸コンピュータ・サービスの67%の株を譲り受けて子会社化するなど,買収攻勢を進めている。もし実現していればNRI買収は,日立のコンピュータ事業にとって最大の企業買収となっていた。