アドビシステムズ日本法人は10月23日,電子書籍事業向けの新しいPDF文書閲覧ソフト「Acrobat eBook Reader 2.2 日本語版」のダウンロード配布を開始した(http://www.adobe.co.jp/products/ebookreader/)。eBook Readerは,PDF文書閲覧ソフトとして普及している「Acrobat Reader」に著作権保護と文書整理の機能を付けたもの。従来のPDF文書を閲覧することもできる。

 著作権を保護したPDF文書(電子書籍)を作成するツールとして,アドビシステムズは「Acrobat Content Server 2.0」と呼ぶサーバー・ソフトも同時に提供する。このサーバー・ソフトで文書を暗号化し,eBook Readerで復号化する。暗号化した電子書籍は,購入の際にダウンロードを実行したパソコンでしか原則,閲覧することができない。これにより電子書籍の著作権を保護できる。

 電子書籍を販売する側の設定次第では,本物の本と同様に期限付きの貸し借りや譲渡といったこともできる。複数のパソコンで同時には閲覧できない仕組みになっているので,例えば電子書籍を第三者に貸している期間中は,貸した側は読むことができず,借りた側だけが読めるように設定できる。このほか,電子書籍の印刷枚数や閲覧時間などの細かな設定も可能である。

 今回のeBook Readerの配布開始に合わせて,オンライン書店のパピルスやイーブックス・イニシアティブ ジャパンなどが,Content Serverを利用した電子書籍の販売を開始した。これまで月に2万5000冊の電子書籍を販売しているパピルスの天谷幹夫社長は,「従来の電子書籍は,絶版した書籍や部数の少ない書籍が多かった。今回の新しい技術により電子書籍も著作権保護という新しい段階に入った。これからは新刊の書籍などもラインナップに加えていく」と意欲を見せる。

 eBook Readerの開発を担当したアドビシステムズの石原信義マネージャーは,「電子書籍が本当に一般化するのは3年後と見ている。その布石として,eBook Readerが大きな役割を果たしていくことになるはず」と期待する。

鈴木 孝知=日経コンピュータ