来日中のビル・ゲイツ米マイクロソフト会長は,NECの西垣浩司社長と10月16日,共同会見し,「製品開発,SI,インターネット・サービスの3分野で戦略提携する」と発表した。マイクロソフトとNECはかねてより密接な関係を築いていたが,改めてそれを強調した格好である。

 マイクロソフトのゲイツ会長が,「日本のコンピュータ・メーカーで最初に当社と提携したのはNEC」と記者会見の冒頭で話せば,NECの西垣社長が「パソコン事業やサーバー事業の展開で大きな協力を得てきた。マイクロソフトにはお礼したい」とこたえるなど,両社の親密さを示す演出が目立った。このところ,ゲイツ会長やスティーブ・バルマーCEO(最高経営責任者)は来日した際,富士通,日立製作所などNEC以外のメーカーと戦略提携を発表することが多かった。

 マイクロソフトとNECにとって,ひさびさに経営トップが握手する記者会見となったため,盛りだくさんの発表内容にした。一つひとつをよく見ると,マイクロソフトと他のメーカーがすでに発表しているものが多いが,発表の量は今回が一番だった。

 製品開発については,NECの次世代ハイエンド・パソコン・サーバーである64ビットIAサーバ「AsAmA」(開発コード名)にマイクロソフトの64ビットOSを組み合わせて,高性能・高信頼性・高可用性を実現させるために共同で検証作業に当たる。サーバー本体だけでなく,高性能・高信頼性を持つSAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)の構築についても研究する。

 さらに,NECが来春に発売する予定の省スペース・省電力サーバー「ブレードサーバ」についてマイクロソフト製品との組み合わせを共同検証する。さらに,Windowsを搭載したパソコン・サーバーの,キャッシュやファイアウオール,負荷分散といった機能の強化を共同で進める。

 SI(システム・インテグレーション)事業については,Windows Server/.NET Enterprise Serversに関するサービス提供を両社が協力して進める。このため,コンサルティングやシステム構築支援を手掛ける「Windows SI Support Center」を,NECやグループ企業の中に設立した。このセンターで,技術情報やシステム構築ノウハウを共有する。

 西垣社長は,「総勢300人のスタッフを投入して,効率的にSI事業を拡大できる体制を作る。例えば,マイクロソフトのデータベースと独SAPのR/3を組み合わせた基幹系システムの構築力を高める」という。

 インターネットサービス分野については,NECのハウジング/ホスティング・サービスにおいて,マイクロソフトの協力に基づいて,Windows/.NETを使ったサーバーの運用サービスを拡充する。最近,コンピュータ・ウイルスの被害が拡大していることにも対応する。西垣社長は「両社のノウハウを結集して,Webシステムのセキュリティや信頼性を向上させるための専門チームを作る」と述べた。(中村 建助=日経コンピュータ