日経コンピュータのセミナーで講演する米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長兼チーフ・ソフトウエア・アーキテクト 米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長兼チーフ・ソフトウエア・アーキテクトはパソコンの将来について,「過去20年間と同様,今後10年間もハードウエア,ソフトウエアともに飛躍的な進歩を遂げ,ビジネスにおいて必要不可欠な存在になると自信を持って言える」と熱弁を振るった。これは,10月15日に開催された「日経コンピュータ創刊20周年記念セミナー」の講演で語ったもの。

 「The PC : 20 Years Young」と題した講演でゲイツ会長は,「これからのネットワーク社会の中で家庭用ゲーム機,あるいはダム端末と呼ばれたものに近いようなネットワーク・コンピュータなどが,パソコンに取って代わると言う人がいる。しかし,これからもパソコンは進化を続け,さらに普及する。なぜなら,少なくとも今後10年間,プロセサは『ムーアの法則』に従って性能向上を続け,メモリーやハードディスクの容量もどんどん大きくなるからだ。すると,写真や動画などを次々と収録できるようになり,パソコンの可能性は,ますます広がる」という。

 中でもゲイツ会長は,ビジネス・シーンにおいての可能性に期待を寄せる。「これからは,よりデジタル・ベースで仕事をする時代になる。そのために,ハードウエアの面では,高解像度のタブレット型パソコンが登場するだろう。タブレット型パソコンがあれば,こうしたセミナーや会議の場でもすぐにメモを取って,友人にメモを送信することができる。私の前回の講演内容をネットワーク経由で調べて,内容に一貫性があるかどうかをチェックすることもできる」と,会場の笑いを誘った。さらに,「今の会議のあり方は,非常に効率が悪い。持ち運びやすく,解像度が高いパソコンがあれば,ビジネスに必要な情報を集約するのに最適なものになる」と続けた。

 ゲイツ会長はソフトウエアの向上によっても,パソコンがよりビジネスを支援する端末になり得ることを強調した。「マイクロソフトは年間50億ドルもかけてWindowsやオフィス・ソフトの開発を進めている。これからは,ささいな情報で自分の仕事が中断されないよう,情報に優先順位をつけるソフトウエア技術が必要だ。例えば電子メールは,仕事でより緊急性が高いものを表示するようにし,ジャンク・メールなどは排除する。家庭に関係するメールで緊急性がなければ,帰宅してから見るようにする。こういった,好みに応じて対応したり優先順位をつける技術によって,本当に大切な情報,自分にとって適切な情報をすぐに見ることができるようになる。そのためには,一つのメール・アドレス,一つのメール・ソフトで管理することも重要だ。いちいち,PDA(携帯情報端末)とパソコンのメールを同期化させるといった作業は,すべて排除されるべきである」。

井上 理=日経コンピュータ