左から順に,松下電工インフォメーションシステムズの浜田正博社長,JTBの佐藤正史取締役,ファーストリテイリングの堂前宣夫常務 「自社の業務をどのように発展させていくべきかを描き,その理想に少しでも近づけるように情報システムを開発していく。これが情報システム部門の重要な役割になる」。カジュアル・ウエア「ユニクロ」で有名なファーストリテイリングの堂前宣夫常務は10月15日,「日経コンピュータ創刊20周年記念セミナー」のパネルディスカッションの席上で,こう強調した。

 このパネルディスカッションには,堂前常務のほか,松下電工インフォメーションシステムズの浜田正博社長とJTBの佐藤正史取締役情報システム担当が参加。10年後の情報システム部門の役割について,活発に意見を交わした。浜田社長と佐藤取締役のいずれも,冒頭の堂前常務とほぼ同一の見解を示し,議論は盛り上がった。

 ファーストリテイリングの堂前常務はパネルディスカッションの冒頭で,「情報システム部門の役割は,ユーザーが日常業務をとどこおりなく遂行できるシステムを提供するだけではない。ユーザーの業務はこうあるべきだと提案していく必要もある」と主張。この意見に対し,松下電工インフォメーションシステムズの浜田社長は,「ユーザーのニーズを最優先に汲み取ったシステム開発は過去のもの。これからは,ユーザーのニーズをある程度無視してでも,業務に適したシステムを開発することが必要だ」と応じた。「ユーザー自身が業務を分かっていないかもしれないのに,言われるがままにシステムをつくること自体に問題がある。これではシステムの導入目的を達成できない」(浜田社長)というのが理由だ。

 JTBの佐藤取締役も,「システムの効果を最大限に引き出すために,業務をどのように変えればよいのかを考えることが重要になる。情報システム部門が,ユーザーの言いなりになってシステムを開発する時代は,明らかに終わった」と言い切った。さらに,「経営層に情報技術の重要性を正しく伝えると同時に,情報システム部員の業務分析能力を何とか高めていきたい」(佐藤取締役)と,将来のCIO(情報統括責任者)の役割についても言及した。

栗原 雅=日経コンピュータ編集