韓国のインターネット企業最大手,ダウム・コミュニケーションズ(http://info.daum.net/eng/)は10月4日,マイクロソフト韓国法人を相手取り,新OS「Windows XP」の販売差し止めを請求する提訴をソウル地方裁判所に行った。ダウムは韓国最大のポータル・サイトを運営するほか,インスタント・メッセンジャー(IM)ソフトの韓国最大手でもある。

 ダウムが同日出したリリースによると,「マイクロソフトのWindows XPは,MSNメッセンジャーなど多数のアプリケーション・ソフトをバンドルして,OS以外の個別商品の使用を消費者に対して強要している。これは,消費者が他社の商品を自由に比較・検討・購買する権利を侵害し,さらに多くの企業が品質及び価格面で公正に競争する機会を剥奪,侵害している」としている。そのため,「Windows XPの販売は,公正取引法上の不正取引行為,および取引強制行為にあたる」として,10月26日に発売予定であるWindows XPの販売を差し止める提訴を行った。

 すでにダウムは9月5日,韓国公正取引委員会に対して,「マイクロソフトのWindows XPが公正取引法に違反している」とする申告書を提出ずみ。さらに9月27日,ダウムに加えてライコス・コリア,韓国通信ハイテルなどのポータル・サイトやソフト・ベンダー18社が共同で声明文を発表。その中で18社は,「マイクロソフトは,IMソフトやインターネット電話など各種アプリケーションを多数搭載するWindows XPを販売しようとしている。これは,国内OS市場の90%以上を占有する独占的地位を利用して,自社ソフトの使用を強制する不正行為だ」と主張している。

 ダウムは,ポータル・サイト「daum.net」の運営に加えて,IMサービス「ダウムメッセンジャー」を提供している,韓国のインターネット企業最大手。「daum.net」のアクセス数は,1日のページビューが2億以上とアジア最大のアクセス数を誇る。「daum.net」内にある無料Webメール・サービス「ハンメール」の発行ID数は2500万件以上で,これも韓国最大だ。ちなみにマイクロソフトのWebメール「HotMail」の発行ID数は,300万~400万程度だと言われている。

 今回ダウムが懸念しているのは,同社が提供するダウムメッセンジャーの市場優位が崩れることである。ダウムによると,韓国内でのIM利用のシェアは,ダウムメッセンジャーが20%で1位,次いでヤフーメッセンジャーが14.9%,MSNメッセンジャーが13%。しかし,MSNメッセンジャーが標準でバンドルされるWindows XPが販売されることで,「IM利用のシェアが独占的地位を持って変えられる可能性がある」と指摘している。

井上 理=日経コンピュータ