「日本語.com」をいち早く押さえたはいいが使い物にならず,“塩漬け”状態のまま契約更新の時期を迎えてしまうユーザーに朗報だ。

 .com/.net/.orgなどのドメイン名を管理する米ベリサインが,実用化に先行して昨年11月から登録を受け付けている多言語ドメイン名の有効期限を,6カ月間無償で延長する方針を固めた。日経コンピュータの取材で明らかになったもの。米ベリサインは今年7月の時点で,「多言語ドメイン名の実用化が遅れたからと言って,何らかの補償をするつもりはない」(米ベリサインのトム・ニューウェル バイス・プレジデント)としていた。

 具体的には,2000年11月10日(米国時間では11月9日)から2001年11月10日までに多言語ドメイン名の登録を行ったすべてのユーザーを対象に,契約の有効期限を無償で6カ月先に延長する。ユーザーは特別な手続きをする必要はない。例えば,昨年11月10日に日本語.comを1年契約で登録したユーザーは,本来2001年11月10日に期限切れを迎えるが,この措置により契約期間が2002年5月10日まで延長されることになる。複数年契約をしたユーザーにも,「6カ月間無償延長」の措置は適用される。

 米ベリサインがこの措置を決めた背景には,当初の見込みよりも多言語ドメイン名の実用化時期が遅れたことがある。同社は当初,2001年6月ごろを実用化のメドとしていた。しかし,多言語ドメイン名に関する技術の標準化作業が難航。ブラウザやメール・ソフトなどが多言語ドメイン名に対応し,ユーザーが実際に使えるようになるのは,「早くても2002年の春」(標準化作業を担当するIETF IDN-WGのジェームス・セン議長)にずれ込む見通しである。

 そのため一部のユーザーからは,「使えないモノにお金を払うのはおかしい」といった不満の声が,ドメイン名の登録業務を代行するレジストラに寄せられていた。米ベリサインは当初,実用化の遅れに対して補償を行わない考えだったが,「中国のレジストラが米ベリサインの方針に反発していた」(関係者)などレジストラからの圧力もあり,今回の方針転換に至ったと見られる。

 日経コンピュータの取材によると,米ベリサインは多言語ドメイン名の登録業務を行う全世界のレジストラに対して,「6カ月間無償延長」の措置をとることを9月28日に通達した。米ベリサインは10月1日現在,正式な発表をしていない。

 国内最大手のレジストラであるグローバルメディアオンライン(GMO)は,米ベリサインからの通達を受けて10月1日午後の会議で対応策を協議し,「通達に全面的に従うことを決めた」(第5営業本部の渡邊直哉本部長)。ユーザーへの正式発表は未定だという。GMOは,同社のドメイン名登録サービスである「お名前ドットコム」を通じて,すでに10万件以上の多言語ドメイン名の登録を受け付けている。

井上 理=日経コンピュータ