自社が開設したWebサイトや電子商取引サイトの優位点や問題点を知りたい--。そんな企業担当者が無料で利用できるWebサイトの評価システムが登場した。インターネット上に公開された評価サイト(http://www.w-prod.com/)である。このサイトにある約200項目の質問に答えるだけで,結果を評価システムが自動生成してくれる。

 この評価システム「SDMTPサイト評価システム」を開発したのは「Webプロデューシング研究会」である。中小企業診断士の資格を持つコンサルタントなどが集まって結成した任意団体だ。評価サイトは7月25日に公開した。

 システム名にもなっている「SDMTP」とは,シナリオ,デザイン,マーケティング,テクニカル,プロデュースの頭文字のこと。同研究会は,企業サイトの構成要素はこの五つと見ており,五つの観点からサイトの評価を試みる。同時に,企業サイトの開設目的を,物品販売,実店舗への誘導,情報提供など八つに分類。目的と構成要素を踏まえて質問を作成し,その回答を定量的に評価する。評価結果はレーダーチャートで表示する。

 この評価システムはWebサイトが抱える問題点の指摘に主眼を置いている。さらに,研究会のメンバーが直接企業を訪問して,Webサイトの問題点に対する改善提案を出す有料サービスも別途ある。

 Webプロデューシング研究会は,SDMTPサイト評価システムを使ったWebサイトの評価事例を,7月末に出版した書籍の中で紹介している。例えば,今年3月に実施したツタヤオンライン(http://www.tsutaya.co.jp/)の評価は総じて高い。

 ツタヤオンラインは,全国のTSUTAYA店舗に顧客を誘導するという「シナリオ」を立て,その仕掛けとなる「マーケティング」戦略として,レンタル半額といったオンライン・クーポンを発行している。こうした戦略を実現する「テクニカル」として,ツタヤオンラインは情報システムをフル活用している。その結果,ツタヤオンラインはWebサイトを使ってTSUTAYA店舗に顧客を誘導することに成功した。

 Webプロデューシング研究会は,ツタヤオンラインが抱える課題も指摘している。例えば「テクニカル」に弱点がある。「在庫システムなどバックオフィスとの連動」には,まだ改善の余地があるからだ。

 すでにツタヤオンラインは通販の商品在庫や物流,決済などを管理するシステムとWebサイトをリアルタイムで連動させている。だが,Webサイトから検索できるTSUTAYA店舗の商品在庫やレンタル在庫はリアルタイムの情報が反映されていない。場合によっては2日前の在庫情報が使われている。

 在庫情報が古いと,Webサイトで在庫を確認してからTSUTAYA店舗を訪れた顧客の期待を裏切る可能性もある。システム投資額を勘案しながら,こうしたバックオフィスとの連動がより一層強化されれば,ますます効果的なサイトになると分析している。(川又 英紀=日経コンピュータ